「凄い屋敷ですね。」

そしてそれからしばらくは平和な日常が続いたが、この日小竜姫は美神事務所の面々と一緒に六道家を訪れていた。

まるで日本ではないような豪華な屋敷と庭に小竜姫は物珍しげに見ているが、別に遊びに来た訳ではなく六道家対鬼道家による式神を賭けた果たし合いの見物に来ていたのである。

小竜姫は知らないが未来と同じく冥子が果たし合いから逃げようと美神事務所を訪れていて、その流れで興味を抱いた令子や小竜姫が見物に来ることにしたらしい。


「小竜姫様～、お茶をどうぞ～。」

「あら、ありがとうございます。」

ただ未来と違うのは小竜姫が居るからか冥子の母である冥菜の対応が違い、令子や横島達は午後のティタイムのようなお菓子やケーキの数々と紅茶が用意されていて至れり尽くせりといった感じなことか。


「あら、相手結構いい男じゃない。」

「なかなか修行も積んでるようですね。 ただ……。」

おかげで全く緊張感がない令子や小竜姫は対戦相手の鬼道政樹を値踏みするように見て批評するも、小竜姫は過去のことを少し思い出していた。

実は小竜姫は未来世界にて一度だけ妙神山を訪れた鬼道に修行をつけたことがあり、さほど親しかった訳ではないが一応覚えている。

と言っても未来の横島が鬼道の父親のことを外道だと語っていたことなんかを覚えていたくらいであり、鬼道自身の実力は正直なところ普通だったとしか記憶にない。


「人間はおかしなことをしますね。」

「古いしきたりなんて今時流行んないのに。 おばさまもあんなの相手するなんて案外優しいのかしら。」

果たし合いとは場違いな空気の小竜姫達であるが、本筋である果たし合いの方は冥菜と鬼道の父との過去の因縁が明らかになると鬼道の父は若干逆恨みするかのようにヒートアップしていく。

求婚を断ったとか事業に失敗したとかお金を貸さなかったとか六道家の側からすると逆恨みもいいとこであるが、ナチュラルか狙ってか不明だが冥菜は鬼道の父の古傷をえぐるようにズバズバと過去のことを語っていた。


「ＧＳが中途半端に事業なんかしても失敗するだけよ。 あんた達も気を付けなさい。 ＧＳはお金がある割に世間知らずだから怪しげな話を持ってくる奴がよく居るのよ。」

ちなみに令子は鬼道の父の過去の話を他人事だと笑っていたが同時に横島と雪之丞にはＧＳの心構えとして気を付けるようにと言い聞かせている。

本来の歴史より横島も成長してるし世間知らずの雪之丞も居ることで、何だかんだと言いながら何かと二人のことを気にかけていた。


「そんな馬鹿な話に騙される奴が悪いんだろ。」

「甘いわね。 あんたも危ないわよ。 誰だって自分は騙されないって言うもの。 でも騙す奴はそんな人ほど騙しやすいもんなのよ。 特に綺麗な女が意味もなく優しくしたら気を付けることね。 あんたみたいな修行馬鹿が女に騙されたなんてこの世界じゃよくあることだから。」

雪之丞に関しては苦労しているらしくそれなりに世間を知っているらしいが、令子から見るとまだまだ世間知らずに見えるらしく自分は騙されないと語る雪之丞を鼻で笑うとハッキリと忠告する。

むしろ横島より雪之丞の方が騙されやすいのではとすら令子は見ていて、自分に自信がなく臆病な横島の方がまだマシではと思うらしい。