「怒られちゃったわね。 でも彼女の言う通りなのよ。 時間移動は危険でおいそれと出来ないわ。 私は落雷を引き寄せて、そのエネルギーを利用して時を超えるのよ。 だからもう会えないかもしれない。」

そして美智恵と令子であるが、こちらは短い時間ながら親子の会話を持つことが出来ていた。

小竜姫の過去とは違い令子は負傷らしい負傷はしてなく、美智恵がこの時代に長期滞在することはないだろうことはないだろう。

令子もそれを理解するが故に今この瞬間が何より愛しく大切だと感じている。


「気を付けなさい令子。 魔族はまた必ず貴女を狙って来るわ。」

「分かってるわ、ママ。」

しかし親子の会話は本当に短い時間でしかなく、美智恵は幼いれーこを連れて雷雲が去る前に落雷を引き寄せて帰っていく。

令子は今の自分とあまり変わらぬ若き母の姿に、かつての母を思い出し強く生きることを誓うしか出来なかった。


「美神さん……。」

「大丈夫よ。 おキヌちゃん。 小竜姫様もいろいろ手間をかけて悪かったわね。」

その後令子は最近買ったばかりの車をレッカー移動させ修理に出すと事務所に戻るが、心配そうに待っていたおキヌに笑顔を見せると小竜姫にも今回の一件で随分手間をかけたことを詫びる。

令子にはどうやったのか分からないがタイミング的に小竜姫が自分達の戦いを見守っていたことは明らかであり、横島の変化も小竜姫の援護かとこの時少し誤解していたが。


「あまり無理をしてはいけませんよ。 貴女の幸せを彼女は一番望んでるのですから。」

「そうね。 でも大丈夫よ。 別れはとっくに済ませたんだから。 それより魔族は何故時間移動能力者を狙うの？ 本当に時間移動は魔族を滅ぼせるの？」

「時間移動を狙う理由は私にも分かりませんね。 神族上層部も何処まで知ってるのやら。 ただ魔族を滅ぼすのは不可能ですよ。 ハーピー自身も恐らく時間移動能力者を狙う理由は知らないのでしょう。 そもそも時間移動とはいえ人間どころか私のような下っぱ神族などでも出来ることと出来ないことがありますから。」

小竜姫もまた令子が見た目以上に弱いことを知っているため気遣うが、令子は母のことより今は魔族のことを優先させることで気持ちを切り替えるつもりらしい。

そんな彼女に小竜姫も現時点で問題ない範囲で時間移動について教えていくが、結局令子としては今までと同じく降りかかる火の粉を払うくらいしか方法はない。


「メドーサといいハーピーといい魔族って厄介ね。」

「人間界で暴れる魔族は少数派の過激な者が多いですからね。 大半の魔族は人間に興味すらないと聞きます。」

「へ～、それは初耳だわ。 まあ考えてみたら魔族がみんな一致結束してるなんておかしな話よね。」

そのまま令子は気を紛らわせるかのように小竜姫と話をしていくが、魔族にも考え方や生き方に違いがあり大半の魔族は人間に興味がないと聞くと驚きの表情を見せていた。

最前線で魔族と向き合うＧＳとしては少し考えさせられるようであり、それは本来ならばもっと経験を積み自ら知ることであるが小竜姫は問題ない範囲で魔族について語って聞かせていくことになる。