母からの伝言

「神族が居るなんて聞いてないじゃん!」

横島から感じるのは紛れもなく竜気であり神族の気配だった。

尤も現状では不完全な竜気で横島の霊力と混じりあっている状態だったがハーピーにそこまで感じとる力はない。

とはいえ大事なのはそこではなく目の前の横島がハーピーにとって驚異というものだということであり、フェザー・ブレットを至近距離から放って再び逃げに入ろうとする。


「グアアッ!?」

「横島! さっさと落とせ!!」

ただハーピーはこの時自身を狙う者が他にも居ることを一瞬忘れていた。

令子は横島が邪魔で攻撃出来ないが、雪之丞の位置からは攻撃が可能だったようで止まったハーピーの背中に雪之丞の霊波砲が炸裂する。


「あれ!? 俺なんで飛んでるの?」

「お主、このタイミングで我に帰るのか?」

二発も雪之丞の霊波砲を浴びたハーピーはフラフラで飛ぶのもやっとといった状態だが、間が悪いのか雪之丞の声に横島が我に帰ってしまい自分が飛んでることに戸惑いだしてしまう。

とはいえ攻撃は心眼でも出来るので妙なタイミングで我に帰った横島に呆れつつ心眼の攻撃でハーピーは地に落とされてしまい、雪之丞と令子により完全な形で倒されることになる。


「無事に終わりましたか。 しかしこれはまた予想外のことが起きましたね。」

「小竜姫様!?」

そしてハーピーが倒されるのを上空から見守っていた横島が地上に降りるとその場に傘をさした小竜姫が幼いれーことおキヌを連れて瞬間移動で現れる。

あまりのタイミングの良さに令子達は驚くも小竜姫の興味は、戦闘が終わっても消えない横島の角と竜鱗の籠手に集まっていた。


「横島さん、力を抜いて下さい。」

「えっと、こうっすか?」

「それでいいです。」

小竜姫は横島にとりあえず力を抜くように告げると横島の角と竜鱗の籠手が消えてしまい横島自身も驚くが、小竜姫はホッとした表情を浮かべる。


「さて、先に用事を済ませてしまいましょうか。 出てきなさい、美神美智恵さん。」

「えっ!? ママ!?」

横島のことは後回しにしてもいいが小竜姫は先にこの場で片付けなくてはならないことを済ませようと考え、近くで潜んでいる美智恵に声をかけて令子を驚かせてしまう。


「強くなったわね。 令子。」

「ママ!」

小竜姫の問い掛けに美智恵は素直に姿を現すと幼いれーこは嬉しそうに駆けていき、令子もまた隠れて見守っていた美智恵に感情が高まり瞳には涙を浮かべていた。

亡くなったということになっている美智恵と時代は違えど令子が会うのは五年ぶりくらいになる。

美智恵は幼い我が子が無事だった安堵感と成長した我が子の姿に穏やかで嬉しそうな笑みを浮かべ親子は再会を喜ぶ。

横島もおキヌも雪之丞も日頃とはまるで違う令子の姿をただ見守っているし、小竜姫もまたその姿を無言のまま見守っている。

美智恵には思うところもあるが美神親子もまた一種の被害者であることには変わりなく、小竜姫としてはすでに過去となった未来とは切り離して見なければと考えていた。


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