母からの伝言

「死ね! 美神令子!!」

雨が降りしきる中ハーピーは車の中の令子を見つけると疑うことなくチャンスだと考え、自身の羽根を弾丸のように飛ばすフェザー・ブレットを令子に目掛けて撃つ。

令子が語った通りハーピーは人間を舐めていたし令子を舐めていた。


「クッ!?」

迫り来るフェザー・ブレットが一撃ではなく三つの羽根を同時に撃つ複数弾だったのは予想外だったが、令子はすぐに自動小銃を構えてハーピーに狙いをつける。

現在令子の車は屋根を閉じている状態のオープンカーだったが特殊な防弾加工でもしてないオープンカーの屋根やガラスではフェザー・ブレットを防げるはずもなく、あっさりと突き刺さり屋根には穴が空き窓は粉々に砕け散った。

だがこれも令子の作戦の一つで結界を出来るだけハーピーに見せないように結界は車の中に張ればいいという考えで車の被害を考えない作戦だった。


「うわあ!?」

令子はそのまま自動小銃で狙いを定めハーピーの胸から羽根の辺りを狙いを撃つが、流石に距離があった為か初撃は辛うじて避けられてしまい令子の生存に気付いたハーピーは更にフェザー・ブレットを乱射するように放ち続ける。


「どわっ!?」

一方車の助手席に座っていた横島は穴が空いていく車の中で自動小銃を撃つ令子の姿に、これがGSの仕事なのかと改めて感じ複雑な心境になっていた。

何も出来ずに安全な心眼の結界の中で真剣にハーピーを撃つ令子の姿を震えながら見ている横島であるが、頭の中を過るのは先程の令子の言葉と天龍童子を暗殺しようとした時の圧倒的なメドーサの姿だった。

どうすれば小竜姫の役に立てるのか、令子には悪いが横島の頭にあるのは小竜姫のことがほとんどであり横島の僅かばかりのプライドからせめて足手まといにはなりたくないと考えを巡らせていく。


「グアアッ!?」

そして戦いの流れはほんの一瞬のことで令子にのみ集中していたハーピーに背後に隠れていた雪之丞の霊波砲が炸裂すると変わってしまい、腐っても魔族というところか落とすまではいかなくハーピーは背後にも人間が潜んでいることから罠と理解し流石に逃げ始める。


「ヤバ! 逃がさないで!」

ただ手傷を負わせたことで逃げ出したハーピーに慌てたのは令子の方で中途半端に逃がすとあとが厄介でしかない。

令子自身も車を降りてハーピーを追い雪之丞も追う中で横島もそれに続くが、心ここに有らずといった様子の横島はこの時何故かGS試験の時に見てしまった小竜姫の涙を思い出す。


「お主何を!?」

単純な横島は思い出した小竜姫の涙で再び僅かばかりの勇気と覚悟を決めるが、それが横島を追い詰めさせる原因となり横島の眠れる才能を呼び起こす結果となる。

横島が現在小竜姫に教わっているのは力を高め集中することだけであり、横島は突如霊力を高め今までにないほど集中させていく。

その突然の変化に気付いた心眼は驚くが、心眼の驚きの声が止まるほど横島は霊力を高め新たな力を呼び起こしていた。


「横島クン!?」

横島が心から力を求めてイメージしたのは、やはり小竜姫の姿だった。

その瞬間横島の後頭部にはなんと竜神族の証といえる角が現れていて、ハーピーに向かって飛んで追いかけ始めたもんだから近くにいた令子は驚きの余りハーピーを攻撃していた手が止まる。


「その気配は……!? まさか……!?」

横島の飛ぶスピードは手負いのハーピーより早くあっという間に近寄るとハーピーは驚き振り返るも、彼女は横島なんか知らないのでその気配から正体を勝手に誤解したらしく顔色が青ざめる。


「小竜姫さまを殺らせるかあ!!」

「小竜姫って誰じゃん!!」

何故か小竜姫の名前を口にした横島は興奮というか突然の力に少し暴走気味のようでハーピーに急接近すると、高めて集中させていた霊力が栄光の手や魔装術のように半物質化していく。

それは未来の横島が用いた栄光の手と似て非なるものだった。

なにより見た目が竜鱗の籠手のような姿となっていて小竜姫が身に付けていた竜神の装備に似ている。

違うのは籠手がての甲から指先まで広がり竜の爪のようになっていることだろう。




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