母からの伝言

「さてと飯にするか。」

一方小竜姫と暮らし始めたことにより横島は毎日学校に通っていた。

横島本人はそこまで毎日行かなくてもと思っているが小竜姫が生まじめな性格であるため、毎朝お弁当付きで送り出すのである。


「相変わらず凄い弁当ですノー。」

「……ちょっとだけだぞ。」

まあ学校に今更来ても授業に着いていけるはずもないし教師も横島に理解してもらおうとあまり思わないので、ほとんど寝てるか授業に聞き流してるくらいしかすることはないが。

ただ地域の公立ではかなり底辺の学校である横島の高校では出席さえしっかりしてれば補習などで卒業は出来るし、出席が足りなかった横島でさえ補習で進級出来たのだから決して悪い学校ではない。

教師の質や生徒の質はちょっと低いが横島のように最低限高卒の資格が欲しいだけの生徒には向いてるのかもしれない。


「ピートは、……要らんか。」

さてこの日美神事務所がちょっとした騒ぎになってることなど知るはずもない横島は普通に授業を受けて昼食にしているが、例によって横島の昼食は行楽に持っていくような重箱弁当である。

少し前の横島同様に貧乏らしいタイガーは毎日羨ましそうに見つめるので横島は渋々おかずを少し分けてやっていた。

ひもじい思いをする辛さは理解してるし、だいぶ前に玉子焼き一つで三べん回ってワンと言えとクラスメートに言われたことも地味に嫌な記憶として覚えていて、どうせ食べきれないほどあるのだしとなんとなくシンパシーを感じるタイガーには分けてやっている。

同じく貧乏らしいピートだがこちらは早くも差し入れの弁当がほぼ毎日届いていて、横島やタイガーを始めとした男子の嫉妬の視線を集めていたが。


「うおー! この恩はいつか! いつか!!」

「お前簡単に裏切りそうだからいらん。 それに感謝が重いわ!!」

結果として横島は日の丸弁当のタイガーにおかずを分けてやりながらの昼食になるも、今一つタイガーに感謝されても嬉しくなく微妙であった。

ただ小竜姫の存在もそろそろ隠しきれなくなっていて横島にもまた嫉妬の視線が集まっているが、横島の彼女は何処かのいいとこのお嬢さんで両親が物凄く怖いと根も葉もない噂になってる影響で未だつるし上げはされてない。

噂の出所は不明だがタイガーとピートが横島の彼女のことになると口が重くなり、あまり触れない方がいいと若干怯えるのでつるし上げにしようと騒ぐ男子が何も出来ないでいる。

というか元々学校にろくに来なかった横島はクラスメートとの仲もそんなにいい訳でもないので、ピートとタイガーや愛子とピートや愛子が親しい女子くらいしか横島は話すことすらほとんどなかったが。


「噂の彼女優しそうだけど?」

「えっ!? 見たの?」

「うん、この前駅前のスーパーで特売のお肉買ってた。」

「横島君が美人の彼女捕まえるなんてね。」

「意外にあり得なくもないから不思議。 申し訳ないけどタイガー君ならあり得ないもの。」

対する女子の方は小竜姫の目撃情報があるたびに噂しているが、大半は噂好きな女子の話の種になる程度で騒がれてはない。

正直そこまで横島に興味がないと言えばそれまでだし、クラスの中でもピートを除けば他はみんな似たり寄ったりなので騒ぐほどではないというのが本音か。


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