あの素晴らしい日々をもう一度

「あの、小竜姫様?」

「心配しなくてもご褒美はあげますよ。 何がいいか考えておいて下さいね。 ただその前にGS試験合格のお祝いに夕食を作ってあげますよ。」

昨日と今日ずっと一緒に居たせいかなんとなく小竜姫と一緒に事務所を後にした横島であるが、アパートに帰る自分に当然のように着いてくる小竜姫に恐る恐る声をかける。


「いや、ご褒美も欲しいですけどその前にまさか家に来るんですか?」

「ええ、迷惑ですか?」

小竜姫はなんとなく言いにくそうな横島の姿にご褒美を要求してるのかと勘違いするが、横島の心配はご褒美よりもこの後どうするかであった。

なんとなくアパートまで着いて来そうだと感じたらしく問いかけた横島に小竜姫は、即座に頷き迷惑かと不安そうに横島を見つめる。


「迷惑なんてとんでもない! ただ、小竜姫様を迎えるには少し問題が……。」

「ああ、部屋が片付いてないのですね。 私は構いませんよ。」

このタイミングでその表情は反則だろうと思う横島であるが、横島の部屋は間違っても女性を迎えるれべるではない。

片付けもそうだし小竜姫に見せたら嫌われそうなお宝も隠さないといけない。

ただ小竜姫はそんな横島の気持ちを知ってか知らずか、部屋が片付いてなくても構わないと笑顔で言い切った。


「何が食べたいですか?」

「やっぱり肉っすかね。」

横島としてはせめて片付ける時間が欲しいが、それをなかなか言い出せぬままに二人は電車にてアパートの最寄り駅に到着する。

そして小竜姫はそのまま駅前のスーパーマーケットに寄ると夕食の食材を選び始めるが、天龍童子の頃は街に疎かった小竜姫がやけにスーパーマーケットに慣れてる様子が横島には少し不思議だった。

まあ小竜姫が変なのは今に始まったことではなく今回のGS試験の仕事が始まる前から変だと横島ですら思っていたが。


「この部屋お風呂はないんですか?」

「安アパートっすからね。」

結局横島は小竜姫に流されるままに自宅のアパートに帰るが、小竜姫を拝み倒して少し待ってもらい見せられないお宝だけは押し入れに押し込むことに成功している。

その際小竜姫が意味ありげな笑顔でクスクス笑っていたことから、横島はもしかしてお見通しかと冷や汗をダラダラと流していたりもするが。

そうしてお世辞にも綺麗とは言えない部屋に入る小竜姫であるが、小竜姫がかつて未来で横島のアパートを見たのは月に行く依頼を令子にする時のほんの少しの時間だけだった。

改めて見ると素直に狭いと感じ興味深げに部屋や台所を見ていく。


「先に掃除しましょうか? 流石にこのままだと私が泊まる場所がないですし。」

「……はい?」

一通り部屋を見た小竜姫は買い込んだ食材を冷蔵庫に入れると掃除をしようと言い出すが、横島はそれに続いて出た泊まるとの言葉に思わず自分の耳を疑う。


「妙神山の管理人を解かれたので私行くとこれがないんですよ。 横島さんならしばらく泊めてくれると期待してたのですが。」

「いやいやいやいや、ダメっすよ! そんなことしたら俺の理性が持ちませんって!!」

どうやら横島は今の今まで気付いてなかったが小竜姫は横島のアパートに住むつもりでいる。

横島の性格上喜んで受け入れてくれると思っていた小竜姫は、はっきりとダメだと言われて驚きの表情を見せていた。


「そうですか。 ならどなたか泊めてくれる方を探さないと。 最悪知らない人でも……。」

「あー、分かりました。 泊まってもいいです。」

どうも小竜姫はまだ未来での記憶に引きずられているからか横島はスケベで積極的なイメージがあるのだが、この横島は小竜姫が積極的になった影響でかなり受け身になっている。

ダメだとはっきりと言われると明らかに悲しそうに落ち込み泊めてくれる人を探さないとと力なく呟く小竜姫に、横島はいろいろ葛藤しながらも最終的に小竜姫を泊めることにした。

正直ここまであからさまに落ち込み知らない人でもなんて言われると追い出すようなことは出来るはずはない。

ただ小竜姫は横島の返事を聞くとすぐに機嫌が直り、横島には部屋の片付けを頼み自身は夕食の支度に入る。


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