あの素晴らしい日々をもう一度

「そうですか。 一人消えましたか」

その後唐巣は自分達の失態を小竜姫の元に行き謝罪するが、小竜姫は特に気にするそぶりもなく少しスケベそうな顔をしている横島にひざ枕をしている。

唐巣はそのあまりに緊張感がない横島に若干引き攣った顔を見せるが、見なかったことにして報告をしていた。


「まあいいですよ。 どのみちGS協会は追放する以外に処罰のしようがないのでしょう?」

「はい、魔族との契約自体は規制する法律はありませんから。 しかし……」

申し訳なさそうな唐巣だが、実は小竜姫は陰念について眼中になくあまり深く考えてなかっただけだったりする。

彼がもう少しまともな人間ならば更正させるなり味方に引き込むなり考えたのかもしれないが、陰念では可能性が薄いと横島の試合を見ながら考えていた。

元々GSが人ならざる者の力を借りることへの規制は全くなく、要は誰の力を借りようと決まりを守り働くならばその力がどこの誰の力かなど問わないというか問えないのが実情だった。

はっきり言えば法廷では力の根源や在り方など証明のしようがない。

ただここで少しややこしいのはメドーサは過激派として神界どころか魔界正規軍からも追われているし、人間界でも世界GS協会やオカルトGメン本部から指名手配されていることだろう。

つまりメドーサと関わるのはGS協会の規約違反になるのだ。

しかしGS協会が出来るのはせいぜい追放処分くらいであり、後は警察の仕事になる。

実際に今回は白竜会の人間の被害ですでに警察も一応動いているが、ただでさえオカルト事件は立証が難しいのにメドーサクラスの魔族が関わると逮捕することすら限りなく不可能だった。

証明が出来ずに裁判で負ける可能性が高いオカルト事件は、よほどの確証がないと警察や検察はやりたがらない。

後々無罪になり不当逮捕などと騒がれると面倒なのだ。

まあ小竜姫としては神族のメンツがあるので、メドーサの計画を防げば十分で後は人間の問題であった。


「あの程度の男ではわざわざ今すぐに探すほどの情報は知りませんよ。 唐巣さんが更正させたいなら終わってから探したらいいと思います。 それより次はピートさんでしたね。 そろそろ行きますよ、横島さん」

どうも唐巣は白竜会の三人を捕らえ証言をさせた後できちんと更正させたいらしいが、小竜姫はそこまで陰念に関与する気はない。

それより小竜姫は次のピートの試合で雪之丞が仲間割れをするのを待っていた。

ピートには悪いが雪之丞はこの段階でメドーサから切り離す必要がある。

横島ともウマが合うようだし何より彼の力は今後必ず必要になるのだ。


「ところで小竜姫様、メドーサはよろしいんですか?」

「では唐巣さんがメドーサならば近くで見張ってるのと、離れて何をしてるか分からないのではどちらが嫌ですか? あれは合理的な考えの持ち主です。 自分の予測を外れれば外れれるほど大人しくしてますよ」

ピートの試合の時間だからと小竜姫は横島を起こすと当然のように腕を組んで会場に移動を始めるが、唐巣はメドーサを放置していいのかと少し慌ててしまう。

しかし小竜姫は未来でメドーサをよく知るだけに、一緒に居ない方がいいと判断したようであった。

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