あの素晴らしい日々をもう一度

「ひいっ……」

そして審判の掛け声と共に横島と陰念の試合が始まるが、陰念は先制攻撃とばかりに横島に霊波砲を放つ。

自分の実力を過信している陰念でさえも、横島が第一試合と第二試合で見せた結界が強力なことは理解している。

出来れば結界を張られる前に仕留めたいと先制攻撃を仕掛けるが、横島が怯えたような声をあげるも心眼が当然のように結界で防いでしまう。


「あのバカ。 まだヤツの実力が分からんのか」

「仕方ないわ。 しょせんは陰念だもの」

横島と陰念の試合は第二試合と同じく陰念が横島の結界を破りにかかることになるが、それを見ていた雪之丞と勘九朗は呆れた様子だった。

心眼の結界が陰念程度では破れないのは二人も十分理解しているが、横島の手の内を暴くことすら出来そうにない状況には呆れるしかない。

どのみち勝機が薄いのだから陰念が勝つには何かしらの方法で横島に結界以外で戦わせるか、魔装術を用いた自身の最大攻撃で強引に破るしかない。

しかし陰念な先制攻撃以降も単純な霊波攻撃で霊力を無駄遣いしており、それが二人を余計に呆れさせていた。


「メドーサ絡みって言うからどんだけヤバいのかと思えば……」

一方の横島だが見た目がヤバい陰念の実力が、予想以上にしょぼいことに気付き少し落ち着いて来ている。

小竜姫の変化の件もあり横島の感覚だと最低限でも天竜童子の事件の時のイームとヤームほどはあるかと勝手に考えていたが、結果は二回戦の九能市と大差ないように見えた。

ちなみに横島は小竜姫の件で忙しくタイガーが陰念に負けた件は全く知らない。


「流石にこの程度のはずはないと思うが…… 少し相手の手の内でも暴いてみるか」

そして陰念の実力の低さに驚いていたのは心眼も同じだった。

雪之丞と勘九朗が別格なのは当然だが、それにしても陰念は弱いというか未熟過ぎると逆に警戒している。

横島自身が小竜姫の為にやる気になっていることだし、心眼は陰念から何か情報でも引き出せないかと考え始めていた。



「あんな雑魚を出すなんて、あのオバハン何考えてるのかしら?」

その時横島の試合を見守っていた令子もまた、陰念の実力からメドーサの計画に疑問を感じている。


第二試合で心眼の結界が強力なのは見ていたはずなのに、何の作戦もなく無駄に霊波攻撃をするだけの陰念にはその実力の低さを再認識していた。

タイガーに勝ったことからもそれなりに実力があるのは確かだが、あんなアホにGS免許を取らせても使い物にならないだろうと思うと逆に何かしらの罠かと不安になり始める。

まあ雪之丞と勘九朗が本命なのは分かるが、陰念は確実に足を引っ張るだろうしこの試合が終わった後に拷問でもちらつかせれば簡単に白状する気がした。

ただ令子の性格では陰念の負けは想定済みであり、罠の可能性を捨てきれずに判断を迷うことになるが。

結局心眼も令子もあまりに未熟な陰念に逆に慎重になり始めていたが、これも小竜姫がもたらした歴史の変化が原因なのかもしれない。


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