束の間の日常

「あれからピートさんはどうですか?」

「うーん。特に変わってませんよ。学校ではね。」

「なかなか難しいのかもしれませんね。」

唐巣とピートが謝罪に来てから数日が過ぎていた。

小竜姫と令子はピートの様子が気になるらしく、学校帰りに事務所に来た横島に聞いてみるも、特に変化がないと聞きなんとも言えない表情をする。

まあ学校では早々態度を変える必要もないのは理解するが、結局唐巣のように人間側に立つだけになるような気もした。

無論それが決して悪い訳ではないし、それでも構わないのだが。


「いいんじゃないっすか? 俺より学校じゃ上手くやってますよ。」

一方の横島からすると学校では自分よりクラスに馴染んで上手くやってるピートなだけに、特に変える必要はないと思うらしい。

流石に怒りや不機嫌が収まったようだ。

そもそも横島自身はそこまでピートの生き方に興味がない。

上手くやってるならいいんじゃないかと、思考が止まるようだった。


「まあ、いいでしょう。私達は私達の仕事に行きましょうかね。」

結局小竜姫も横島の言葉からピートが自らの意思で人間寄りに生きるならば、それで構わないと頭をすぐに切り替えてしまい、この件は気にするのを止めてしまう。

正直小竜姫とすればあまり縁がないピートより、横島が最近同じ人間より自分を優先し過ぎてることの方が気になっている。

よく言えば小竜姫も人間達も一個人として見てるということで好ましいが、悪く言えば人間社会からはみ出しつつあった。

しかし元々自分すら信じられない横島は、他人など当然信じてないので、横島自身の他人に対する態度は実は変わってない。

ただかつては煩悩の求める先に人間の女性があったのが、今は小竜姫の存在のおかげで人間の女性に対する興味すら薄れてるだけになる。


「今日の依頼はオフィスビルに徘徊する泥棒の悪霊っすね。 ビルに泥棒に入った悪霊が階段で足を滑らせて亡くなり悪霊化したと。 アホなやつ。」

実のところ同じ人間といえど千差万別で横島も特に珍しいタイプではないが、もし自分が一緒に居られなくなったらと思うと小竜姫は少し不安があった。


「さっさと行って終わらせようぜ。」

「そうだなぁ。 小竜姫様、夕食はなんっすか?」

「今日はカレーですよ。」

「おっしゃ! アホな悪霊を竜気で浄化してやる!」

その後、美神事務所を出た小竜姫と横島と雪之丞は電車で今日の除霊現場に向かうが。

最近燃費が悪い横島は近くのコンビニから肉まんを五個買ってバクバクと食べながらも、夕食の話にテンションが上がる。

ある意味横島らしい姿に小竜姫はホッとしつつ、しばらく様子を見ようと心に決めていた。


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