「済まなかったね。 迷惑をかけて」

小竜姫より遅れること数分後には、警察が来てアン・ヘルシングは未成年ということから保護という形を取られて連れていかれた。


「別にいいっすけどね。」

事態はすぐに唐巣に知らされ唐巣とピートは説明と後始末に走り回っていて横島の元にも謝罪に来たが、横島の反応は今一つ良くない。

クラスメートは女子を中心にピートは被害者だと簡単に許してしまい、男子もなし崩し的に許さないといけない空気になり許したが横島は今一つ納得してない部分がある。

結果だけ見ればピートなら何をしても簡単に許されるんだという事実から、幼い頃に親友の銀一と比較され横島だけ責められた過去を思い出したので不機嫌であった。

それに香港の一件から唐巣が人間の都合ばかり押し付けてくるようなイメージが出来てしまい、横島の中での唐巣の評価が微妙になっている。

ピートに関しても自分だけ逃げたようにしか思えなく、ピートが悪くはないので責めるつもりはないが、信用出来ないんではと思い始めていた。


「先生。 ヘルシング教授にはちゃんと言ったんでしょうね。 孫娘が取り憑かれてるの、知らなかったじゃ済まされないわよ。 あとピート。 あんたも中途半端なことするなら迷惑よ。あんたが甘い顔して逃げてたから、発覚が遅れたって可能性もあるのんだからね。」

「済まない。 美神君。」

どうせ自分が何か言っても誰も本気で聞かないんだろうと不機嫌そうな横島は何も言わないが、流石に令子は横島の心情を理解してるのか唐巣とピートにキツく釘を刺すように言いたいことを言っていた。

本来の歴史と違い令子は無関係故に、言いたいことが言えるらしい。


「すいません。横島さん。美神さん。」

「あんたにはあんたの苦労があるんだし、私が言うべきじゃないんでしょうけど。 あんた吸血鬼としての誇りもプライドもないなら、ＧＳなんて辞めて大人しく島で暮らした方がいいわね。」

「美神君。 そこまで言わなくても……」

「あんたが捨てた誇りやプライドを他の仲間も全員捨てれるの？ 私ね小竜姫様を見て思うのよ。 人間に合わせるのと、誇りやプライドを捨てるのは違うわ。 あんたが島の吸血鬼の代表として、ここに居るならちゃんとしなさい！」

結局令子は唐巣とピートに言いたいことを遠慮なく言って二人を追い返していたが、小竜姫はそんな令子を見つめながら口を挟むことはなかった。


「小竜姫様。 私間違ってるかしら？」

「さあ。 少なくとも私には美神さんの言葉は、ピートさんに必要だと思いましたよ。 神の私と吸血鬼のピートさんでは立場も苦労も違うでしょうけどね。 でも誇りもプライドもないなら、少なくともＧＳなどせずに一般人に紛れて生きるべきでしょう。」

「そうよね。 先生の悪いとこばっかり真似してもピートの為になんないのよね。」

令子の言葉に不機嫌そうだった横島も少し驚いていたが、小竜姫は令子が自分との日々で本来の歴史とは違う形で成長したことが嬉しかった。

小竜姫の理解者となった令子は本当に頼もしく、そして今回はピートにはいい薬になったろうと確信していた。