束の間の日常

「邪魔はさせない! 妖魔なら退治する!」

「タイガー。 やれ。」

「キャ!?」

銃を横島に向けるアン・ヘルシングだが、次の瞬間に彼女の持っていた銃は蛇に変わりアン・ヘルシングは銃を投げ捨てた。

無論それはタイガーの精神感応であり、横島がやらせていたのだが。


「謝れ。 ピートと何があったか知らねえけど、俺達にはなんの関係もねえだろうが。 みんなに謝れ。」

「この化け物が!」

「……てめえ。」

銃を投げ捨てたアン・ヘルシングは別の武器を手に持つが、武器はすべて蛇やネズミなどに変わるので放り投げてしまい彼女は横島を殺意を込めて睨む。

ただ横島も流石にキレてはいたが、ちょっと脅して反省させて許そうとするも化け物と言われると顔から表情が消えた。


「なるほど。 人間以外は死ねってか?」

「化け物はみんな私が退治してやる!」

横島は許せなかった。

小竜姫から貰った力を侮辱するアン・ヘルシングが。


「なら……」

「横島さん。 何があったか知りませんが、心を乱してはいけませんよ。」

横島の気配が変わり怒気の含んだ竜気が更に膨らみかけたその瞬間、突然目の前に可愛らしいエプロン姿の小竜姫が瞬間移動で現れて空気が変わる。

クラスメート達は初めて見る横島の霊能力と怒った姿に静まり返り息を飲んでいたが、そんな緊張感を吹き飛ばすような小竜姫にポカーンとしてしまう。


「小竜姫さま。」

「何があったんです? 突然それほど竜気を使うなんて?」

「そいつがピートを退治しに来て、俺達に発砲したんっすよ。」

そもそも横島の竜気は未だに自分で生み出せる量は限られていて、竜気を大量に使うときは小竜姫の竜気を使っている。

従って横島が竜気を使っていることに気付いた小竜姫が、様子を見に来たのが現状であった。


「ふむ。 貴女は……」

「吸血鬼は死ね!」

「何かに取り憑かれてますね?」

一方アン・ヘルシングは瞬間移動で現れた小竜姫など無視して再び横島を攻撃しようとするが、あっさりと小竜姫に現状を見抜かれてしまう。


「取り憑かれてる? 心眼?」

「すまぬ。 我にはその者からそのような波動は感じられなかった。」

「クッ! 離せ!」

「無理もありませんよ。 本人と近い者のようですし、巧妙に隠れてましたから。 正体を現しなさい!」

横島は心眼が見抜けなかったことに驚くが、アン・ヘルシングに取り憑いているのは血縁である初代ヘルシング教授の執念が、意思を持った悪霊となった存在だった。

霊波の質が近い上になまじオカルトの知識が残っていたようで巧妙に隠れていたようである。


「クッ、邪魔をするな!」

「どなたか存じませんが、ここは貴方の居るべき世界ではありません。 消えなさい!」

アン・ヘルシングはあっさりと小竜姫に捕まると、小竜姫により初代ヘルシング教授の執念は分離されてしまい小竜姫の竜気で一瞬で消し去られて終わった。

そしてその瞬間。

小竜姫の頭にも横島と同じ角が現れたことでクラスメート達は理解する。

彼女が噂の横島の恋人なのだと。



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