「相変わらずモテモテだな。 ピートは。」

「そうですノー。」

いつもと同じように学校の昼食時間になると、横島はタイガーに昼食を分けてやり自身も小竜姫の手作り重箱弁当を食べていた。

相変わらず女子に人気のピートの元には弁当の差し入れがあり、横島やタイガーを含めた男子は面白くなさげだが、この世界の横島はピートの弁当を横取りするほど食べ物に不自由はしてない。

結果として本来の歴史より嫉妬されながら食べにくそうに差し入れの弁当を食べているが、そこで事件が起こる。


「ピエトロ・ド・ブラドーさんいらっしゃいますか？ 」

「あら、新顔さんね。 ピート君」

サングラスをして私服の怪しげな女がピートを訪ねてきた。

クラスメートがまたかという顔をするが、怪しげな女はいきなり手に持っていた箱からライフルを取り出すとピートに向けて教室で発砲する。


「アン・ヘルシングか！」

ライフルの銃弾を辛くも避けたピートは、相手を見て引きつった顔をしつつ逃げるが、アン・ヘルシングは遠慮なく横島達クラスメートを巻き込むようにライフルにて銀の散弾をぶっぱなす。


「みなさん。 危ないところでしたね。 あいつは吸血鬼なんです！」

「あなたね。」

教室の壁には大きな穴が空きピートはそこから逃げてしまうが、残されたクラスメートはあまりの自体に呆然とする。

アン・ヘルシングはそんなクラスメートにピートは吸血鬼だと熱弁したが、教室の空気がほんの少し本来の歴史とた違うことにアン・ヘルシングは気付かなかった。


「俺の卵焼き……」

「ワッシの唐揚げ……」

本来と違い重箱弁当を食べていた横島とタイガーは弁当に夢中だったがとっさに心眼が結界を張って無事であった。

しかし散弾の衝撃で机がひっくり返り、何とか重箱弁当は横島とタイガーが守ったが、卵焼きと唐揚げが一つずつ落ちていた。


「チッ！　こうしちゃ要られないわ！　早くアイツを追わないと！」

被害は卵焼き一個と唐揚げ一個だが横島にとっては小竜姫が作ってくれた大切な弁当の一品であり、タイガーにとっては最後の楽しみにと取っておいた一個になる。


「貴方。あいつの行きそうな場所に案内して！」

呆然と立ち尽くす横島にアン・ヘルシングは本来の歴史のように、コントロールするアンテナを付けて命令するが横島は無反応だ。


「返せ。 俺の卵焼き」

「ふざけないで！　早くアイツの居る場所に案内しなさい！」

額に青筋を浮かべた横島にアン・ヘルシングはピートのところに案内させようとするが、流石にこの世界の横島をコントロール出来るほどの物ではないらしい。

そしてアン・ヘルシングの、あまりに横暴な態度に横島はキレた。


「ちょっと！？　横島君！？」

その瞬間横島をコントロールしようとするアンテナを竜気を解放して吹き飛ばすと、竜装術の姿となりアン・ヘルシングを睨み付ける。


「貴様も妖魔か！」

愛子やクラスメートは横島の変貌に驚き目を白黒させるが、アン・ヘルシングは横島を敵と断定したのか銃を向けて発砲しようとした。