束の間の日常

一方小竜姫の日常は朝に横島を送り出すと、部屋の掃除や洗濯をしていた。

ただ毎日掃除や洗濯をしていればあまり時間も掛からないので、暇になるとテレビを見ながらお茶を飲んでいる。

小竜姫自身は妙神山で暇には慣れてるので特に不満はないが、毎日同じ話題ばかりだと流石に飽きるらしくら香港の件なんかはもう見たくもなかったが。

基本的に令子が出勤するのはお昼頃なので、小竜姫自身もお昼を食べてから美神事務所に出勤する。

ちなみに面倒なのと電車賃節約の為に瞬間移動での出勤であった。


「あまり面白そうな依頼はありませんね。」

「早々面白い依頼なんてないわよ。」

雪之丞が来るまでは事務所で令子と話をしたりしていて、依頼の確認なんかもしている。

ただ小竜姫自身は自分の知らないような面白そうな依頼をやりたがるようになっていて、令子を苦笑いさせていたが。

最初は小竜姫が事務所に居着くなんて気が抜けないかもと少し悩んだ令子であるが、自由すぎる小竜姫に逆に心配する立場なのだから自分でも不思議だったりする。


「そう言えば南部グループの件。 もうすぐ動けるそうよ。」

「そうですか。 西条さんには大変なことばかり、頼んでしまい申し訳ないですね。」

「いんじゃない。 香港の件以降は小竜姫様が信頼したってことで、やりやすくなったって言ってるし。 それにあれは放置出来ないわ。」

尤も小竜姫は香港から戻るとヒャクメによる地下鉄で悪霊事件の調査がほぼ終わり、あの事件が南部グループの実験であることを掴んでいて追い詰めるべく動いていた。

すでに現状でも小竜姫の知る未来と変わらぬことをしている南部グループに、慈悲を与える気は全くない。

そもそもあの手の技術は研究に年単位の月日が掛かるので、メドーサが南部グループに最初に接触したのは何年も前なのだ。

現状ではすでに実戦テストをしてる段階で、非合法なモグリのGSなどが依頼と称して南部グループの施設で実験台にされていた。


「こちらも根回しはほぼ終わってます。 どのみち彼らにはもう未来はありませんよ。 逃げる場所はありませんから。」

小竜姫としては自身の未来のように美神事務所に依頼が来るまでは待つか悩んだが、小竜姫が美神事務所に居るのはオカルト業界ではそれなりに知られている公然の秘密なのだ。

南部グループも馬鹿ではないのだから令子に依頼が来るとは思えず、どのみちすでに研究は引き返せないほど進んでいるならばと少し早めに叩くことにしている。

人間界の裁判で使える地下鉄の事件に関与した証拠は残念ながら得られないが、銃刀法違反やらオカルト犯罪防止法など複数の別件での証拠はヒャクメが集めていた。

香港の件がまだ世の中で騒がれてる中、西条は密かに南部グループを捕まえるべく関係各所と調整していたのだ。


「命をもてあそぶ馬鹿が、これで居なくなればいいけど。」

令子もまたヒャクメの集めた南部グループの研究を見ているが、正直令子ですら気が狂ってるのではと疑いたくなる。

確かに除霊は人間の都合で霊や妖魔を退治することもあるが、南部グループの心霊兵器は常軌を逸してるとしか思えない。

人として越えてはいけないラインを南部グループは越えていた。

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