束の間の日常

「うおー! メシじゃ! カロリーじゃ!」

「タイガー。 静かに食え。」

一方この頃の横島の高校生活は、特に代わり映えのしない平凡な日々が続いていた。

何故か相変わらず貧乏なタイガーに重箱弁当の昼飯を分けてやる横島であるが、毎回毎回騒ぐタイガーには流石にうざくなってるらしい。


「横島君。 そんなに食べてよく太らないね?」

「オレの霊能力ってどうも燃費が悪いみたいでな。 食わなきゃ腹減るんだよ。」

ただクラスメートの女子なんかは毎日重箱弁当を食べる横島を少し不思議そうに眺めて声をかけていた。

実は毎日重箱弁当を食べてるのに、未だに細くスリムなことに気付きその秘密が知りたいらしい。


「何それ。 羨ましい!」

「私も霊能者になりたい!」

「お前らなぁ。」

それは竜気を扱うちょっとした副作用のようなものだった。

竜気自体は元々神の力なので神魔界のエネルギーを元に自らの魂の力として使うのだが、扱う横島は人間であり当然肉体がある。

竜気の強力なエネルギーに肉体が耐えるには新陳代謝の異常なまでの活性化とエネルギー消費をしてるらしく、とにかく食べるようになっていた。

竜装術を使いはじめてから何となく変化が現れていたが、香港の一件で小竜姫の竜神の装備を使ってからは、横島の竜気を扱う技術が上がったのか更に食べるようになっている。

小竜姫いわく肉体が慣れると落ち着くだろうとも言っていたが。


「人間が使える力じゃないですからね。 僕も魔力をあまり使うとキツいですから。」

女子は食べても太らない横島を羨ましがっていたが、横島の現状を割りと大変だと理解していたのはバンパイアハーフのピートだった。

彼は生まれつきなので横島ほど極端ではないが、神魔のような肉体を持たぬ霊的生命体ではなく、肉体のある吸血鬼のハーフなのだから横島と似てる部分があるらしい。

結局神にしろ魔にしろ肉体で力を使うのは負荷がかかるので、横島なら食事をピートなら血か植物の生気が必要になるようである。


「全く時給255円じゃなくて良かったわ。 255円なら餓死する自信がある。」

霊能力自体は天性のセンスで向上してるが、あまりに急激な成長に横島の肉体はが追い付かなくなるという自体は小竜姫でさえ予想外だった。

最初は横島が喜ぶからと作っていた重箱弁当も、最近では無くてはならない物になっている。

あまりお腹が空くので横島は早弁もしてるし、放課後にはコンビニで買い食いしてる程だった。

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