束の間の日常

「美神君。 香港の件はやはりダメかね?」

「無理ね。 香港の現状は小竜姫様に関係ある?」

一方令子は唐巣の教会を訪れていた。

実は唐巣の元には香港の件で小竜姫に取り成して欲しいと、あちこちから頼まれて令子に頼んでいたが答えは決まっている。


「しかし、こうも混乱が続くのでは……」

「事件は解決したのよ。 犠牲も出なかったし万々歳じゃないの。」

問題はアジアの経済にまで影響を及ぼしていて香港や中国本土に多額の投資をした外国企業に中国政府など、とりあえず香港を建て直したい者達はあの手この手で動いていて、小竜姫へのアプローチもその一つだが神を怒らせた土地の価値は下がり続けている。

困ったことにオカルトGメンが内々にだが神族を愚弄して逆鱗に触れた件を認めていて、報道こそされてないが世界の政財界では知らぬ者が居ない事実になってるので、せめて小竜姫の許しが欲しいらしい。


「こういう言い方するとあれだけど、余計に機嫌損ねるだけよ。 正直うんざりしてるみたいだし。 あとは人間の問題でしょ?」

しかしまあ小竜姫も令子も、正直香港の件はうんざりしててもう話も聞きたくなかった。

何故神族の小竜姫が高々人間の国や地域の為に妥協して許さねばならないのかと考えると、令子はまだ小竜姫が舐められてるとすら感じている。

肝心の小竜姫はテレビのワイドショーが、みんな香港の話ばかりなのでうんざりしてるだけだが。


「日本のGS協会は許したんだしいいじゃない。 先生も小竜姫様を舐めてるの?」

「いや、私は……」

「困ってる人を助けたいのは分かるわ。 でもね、今の小竜姫様を舐めてると先生も痛い目見るわよ。 許しが欲しいなら出来ること先にやんなさいって言っといて。 誰だか知らないけど。」

基本的にお人好しの唐巣は頼まれると嫌とは言えないタチなのでつい令子に頼んでしまうが、現状では香港当局の首が何人か飛んだが公式な責任は今一つはっきり認めてない。

中国やイギリスに至っては公式には沈黙していて、メンツや責任逃れを続けてる以上、令子から小竜姫に頼む気は全くなかった。


「君に仲介を頼むと、お金だけ取られて終わったと聞いたが?」

「小竜姫様に聞いたら? ちゃんと話しはしたわよ。 知りませんの一言で終わったけど。」

すっかり小竜姫の窓口にされてる令子は、あまりに身勝手な人ばかりに小竜姫以上に怒りとストレスを溜めつつあった。


「しかしね。」

「それに私は無理だって断ったわよ。 なのにダメでもいいからってお金置いていくのにどうしろと?」

流石にお金を小竜姫と山分けしてる秘密は小竜姫のメンツを考えて言わないが、令子も自らお金を要求まではしてなく、無理だからと断っても聞かない連中が今度はお金だけ取られたと騒いでるらしい。


「これ以上騒ぐなら、小竜姫様に頼んで圧力加えてもらうからそれも言っといて。 あと横島君と伊達君にちょっかいだしたら、どうなっても知らないのも伝えてよね。 あの二人は小竜姫様の弟子なんだから本気で怒るわよ。」

実は唐巣自身も何度か小竜姫に頼んだが、冷たい返事しか返って来なかったのだ。

正直最近の小竜姫は令子の方が気が合うのが本音で、身勝手な人間までも助けようとする唐巣とは幾分価値観に開きがある。

別に唐巣個人は嫌ってはないが、イチイチ人間の都合で頼まれても小竜姫には関係ないことだった。


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