束の間の日常

「つまり自分の管理する土地さえ良ければ、他は以外どうなってもいいと?」

「だったらどうだってんだい! 文句あるなら力で来な!」

「どうしようもありませんね。 まるで下っぱ魔族じゃありませんか。」

「どうした? 来ないのかい?」

小竜姫は淡々と話し合いで解決しようとするも石神は魔族かヤクザの下っぱのような態度で、小竜姫の怒りのボルテージを上げていく。

令子はもう止められないとばかりにおキヌを下がらせているし、横島と雪之丞は神族同士でもあれほど違うのかと改めて驚いている。


「土地神失格ですね。 天照様に報告して処分して頂かねば。」

「……貴様一体!?」

小竜姫の最後通告に石神は予期せぬ名前を聞いて表情を強ばらせるが、次の瞬間には小竜姫の解放した竜気にあっさり吹き飛ばされて本体の石に激突して止まる。

その瞬間普段は隠している角が現れると後ろで見ていた浮幽霊達は唖然とする者や拝み始める者など様々だ。


「力で決着を付けるのでしょう? かかって来なさい。」

「いや。アタイは……」

「善悪も良心もなくただ力で物事を解決して自分以外はどうなろうが関係ない。 貴女のような者に神族を名乗られたくありません! さあかかって来なさい!!」

竜気を解放した小竜姫の言葉には言葉以上の威圧感があり石神程度が対抗出来るはずもない。

圧倒的な力に簡単に弱気になる石神に、小竜姫の怒りは更に高まり神剣を召還すると抜いて構えると石神を更に追い詰める。


「あの、小竜姫さま。 その辺でお怒りを静めて頂けませんか?」

触れたものを滅ぼすとでも感じる怒気の含んだ竜気に怯える石神の姿に、流石に可哀想だと感じたおキヌが小竜姫を止めるべく声をかけた。


「罪もないか弱い者を力で潰しにかかったのです。 ならば自身も同じことをされる覚悟が神族ならあるはずです。」

「私は才能がなくて出来ませんでしたけど、土地の管理って大変なんだと思います。 石神様も話せば理解してくれると思うんですよ。 ここは私に任せて頂けませんか?」

「……仕方ありませんね。 おキヌちゃんにそこまで言われたなら。」

小竜姫の竜気を直接受けてないとはいえ、その怒りを収めたおキヌに石神や浮幽霊達は驚き凄いと素直に感じた。

一方のおキヌは石神は不器用だけど浮幽霊達を強制的に成仏までさせてないので、そこまで悪い神様に思えなかったらしい。

それに三百年も孤独の中で山に括られていたおキヌには、自ら一定の土地から離れられぬ石神の辛さを理解してる部分もあった。


「悪かったな。 ちょっと前のとこでいろいろあってな。 もう幽霊に手はださないよ。 アンタのようなボスが居るなら問題ない。」

「ありがとうございます。」

石神はあっさりと素直になり、改心とまではいかないかもしれないが幽霊に手を出さないことを約束した。

自分は口も聞けないほど怖かった小竜姫を説き伏せたおキヌを石神は認めたというのが現状だろう。


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