神と人と魔の狭間で

「さあて、私達もあんたと遊んでる暇ないのよね。 今なら逃げても追わないであげるけど?」

「私を雪之丞と同じだと思わないことよ。 完成した魔装術を見せてあげるわ。」

そして小竜姫をメドーサの元へと送り出した令子は勘九郎を相手に興味なさげな表情でどっかに行ってしまえと、しっしと追い払うような仕草をするが勘九郎は逃げる気など更々ないらしい。

この世界では未だ勘九郎の魔装術を令子達は見てないので明らかに格下相手に令子もエミも見ているし、最早香港の当局の為に勘九郎を捕らえる必要もないので逃げるなら本当に追う気がないのだ。


「うふふ、完成した魔装術はどうかしら?」

「やっぱその程度よね。 悪いけど横島君の方が単純な力でも上よ。 それに……GSは力比べをする訳じゃないってとこ見せてあげるわ!」

勘九郎は流石に令子達を相手に魔装術抜きでは勝てぬと判断したのだろう。

自慢気に魔装術を展開するが幸か不幸か横島の竜装術に比べると受ける威圧感は低く、令子は単純な力では自身より上なのを悟りながらも驚きも戸惑いもなかった。


「減らず口を!」

勘九郎は自らの剣で令子を粉砕するように思いきり振りかぶり切りつけるが、やはり令子は神通棍で受け流すと見下すように笑みを浮かべる。

尤も勘九郎の力量はやはり高くエミですら直接戦闘を始めた二人には介入できないが、未来のGS試験の時と一つだけ違う点がある。


「冥子! いい。 私の言う通りにするワケ。」

「うん。 分かったわ~。 メキラちゃん~アンチラちゃん~アジラちゃん~」

ある意味GSチーム最強の爆弾娘がまだ健在であることとエミが彼女をコントロールするように令子と勘九郎の戦いに介入を試みたことであった。


「ぐうわぁぁぁ!!」

最初はメキラが瞬間移動で令子を強制的に移動させると、耳が刃となっているアンチラが勘九郎の右腕を切り落としてしまいとトドメとばかりにアジラの電撃が勘九郎を襲う。

特に事前に決めていた作戦ではないがこの場には三人プラス存在感の薄いタイガーしか居ないので、邪魔になるような存在もなく必然的に息が合っていて冥子の式神の攻撃は勘九郎に重症を負わせるほどに見事決まっていた。

周りのソンビもすでに他の式神とエミの霊体撃滅波でほぼ倒されていてすでに勝負は見えていた。


「分かったかしら? GSは力比べをしてるんじゃないのよ。」

最後にメキラが令子を移動させたのは勘九郎の背後だった。

まあ令子もエミも冥子がここまで上手くやるとは思ってなく内心ではビックリしていたが。


「くっ。 こうなれば貴様らだけでも死ぬがいいわ!」

「えっ!? これは火角結界!?」

ただやはり令子もまだ人である勘九郎のトドメを刺すのを、一瞬躊躇ってしまった隙に勘九郎は最後の力を振り絞り令子から離れると四人を火角結界に閉じ込めてしまう。

しかし勘九郎が力尽きるその瞬間を狙っている者が居ることに勘九郎は気付くことが出来なかった。


「……生きていたのね。 横島。」

「ああ。 小竜姫様と選手交代したからな。 小竜姫様からの伝言だ。 残念だけどお前はもう救えないとさ。」

勘九郎は息も絶え絶えのまま屋敷に戻り火角結界の範囲から逃れる為か地下の風水盤のところに行こうとするも、その瞬間上空から猛スピードで降りてきた横島の神剣が勘九郎の背中から胸に深々と突き刺さっていた。


「……私と貴方は同じよ。 ……横島。 いずれ貴方も……」

「一緒にするな。 小竜姫様はお前にもチャンスやったんだろうが。」

そしてその瞬間に令子達を捕らえた火角結界は勘九郎の魔装術が解けて倒れると消えてしまい、横島は無我夢中とはいえ始めて人を剣で刺したことに震えていた。

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