神と人と魔の狭間で

「ダメだ。 本部は香港当局との交渉を断念した。」

「なんでよ。 小竜姫様はどっちでも構わないって言ってるのよ?」

「小竜姫様の真意を正確に理解できてるのは令子ちゃん達と僕くらいだ。 本部には伝えたが本部としては神族に筋の通らぬ妥協をさせたなどという前例を作ると今後に影響しかねないと判断したらしい。 小竜姫様のみならず他の神族の方を不快にさせるの可能性がある以上筋は通すとのことだ。」

そして午前九時を過ぎると小竜姫の指定した翌朝を過ぎる頃となり西条はオカルトGメン本部と連絡を取ったが、オカルトGメン本部は筋の通らぬ妥協を神族にさせるような前例を作れないと妥協しなかったらしい。

この件に関しては幾つかの立場の違いが交渉決裂を招いてしまった。

香港当局は神族とはいえ人界への介入など早々しないだろうししても自分達に影響はないと高を括っていて、言葉には出さなかったが所詮は日本の神族下っぱ神族と舐めてる部分がない訳でもない。

一方のオカルトGメンは今回に限らず神族との協力は表沙汰にしてないが普通にあることであり、神族の力とその影響力を身をもって理解している組織になる。

無論無理難題を神族が言えば誠心誠意説得することになるが、今回のように寛大な措置を取ったからといって神族に筋の通らぬ妥協をさせることがあっては確実に今後に響くのだ。

神族にも様々で小竜姫が良くても後々に別の神族が不快に思う可能性も割とあることだった。

その辺りは今後の他の神族のことまで知らないというか関係ない小竜姫と令子にはどうすることも出来ないし、ここでオカルトGメンにこれ以上リスクを犯せとも言えないことである。


「まあ該当地区の避難だけは始めたようだし、後は本部が責任を持つそうだ。 小竜姫様の顔に泥を塗ることだけは絶対にないから安心していい。」

「厄介なことを任せてしまいすいませんね。 こちらからも上層部にオカルトGメンが協力したことは伝えますから。」

「じゃあ私達は私達で仕事やるしかないわけね。」

ただ流石に人命の被害は出したくないらしくオカルトGメンが指定した地域は住民の避難だけは開始してるらしく、小竜姫も令子もあとは本当に知らんと完全に匙を投げてしまった。

しかも元々メドーサの件はアシュタロスに絡む重要な案件なので小竜姫も匙は投げたが神界上層部にはきっちり報告をして問題にするつもりだ。

オカルトGメンが神族に対してきちんと筋を通した以上は、香港当局や引いてはイギリスや中国がオカルトGメンに筋の通らぬ圧力をかけたりしないように最低限上層部に動いてもらう必要もあった。

当然ながら小竜姫が譲歩して我慢したことも上層部には伝わるし香港当局の神族を神族と思わぬような対応は決して世間には公表されないが、イギリスや中国をも巻き込んで神族上層部に目をつけられることになり香港当局は苦しい立場に追いやられることになるがまあ小竜姫にも令子にも西条にも関係ないことである。

西条自身は今回の一件で少なくとも小竜姫の信頼を得てることを本部に理解させただけでも損はしてないし、小竜姫も寛大な心で人間に協力したことはオカルトGメンや関係者に悪い印象を与えることなどない。

最終的に普通に仕事をしてれば一番実を得たはずの香港当局が一人損をすることになる。
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