神と人と魔の狭間で

「それにしても地下だとは。 人海戦術も使えないということか。」

「それも計算のうちだろう。」

その後ヒャクメのもたらした情報により対策会議は始まるが問題になったのは現場が地下にある空洞を利用した場所ということだった。

これが地上ならば人海戦術が使えるしヘリや装甲車なども選択肢として考えられたが、狭い地下では自ずと少数精鋭による突入しか選択肢がない。


「ねえ、軍でも動かしてピンポイントで爆撃出来ないかしら。 バンカーバスターとかで。」

「無理だな。 せめて一週間あれば可能性はあったかもしれないが今日明日で出来る作戦じゃない。 香港は中国領だが英国の租借地だから手続きが複雑で面倒なんだ。 本部の精鋭もそれで明後日まで来れないくらいだからな。」

ちなみに令子は軍による爆撃で地下の風水盤を破壊する案を出すも西条に無理だと言われる。

ある意味確実に元始風水盤起動を阻止は出来るが手続き複雑な上に人口密集地域でもあるので、よほど高度な政治判断を下さねば出来ぬ作戦だった。


「それは止めた方が良かろう。 下手なことをすればこの辺りの地脈が滅茶苦茶になるぞ。」

更に香港当局の人間に茶菓子を要求していたカオスが風水盤の乱暴な破壊は地脈に影響が出る可能性を指摘すると、他にも強行な作戦が一切立てられなくなる。


「結局突入しかない訳ね。」

「出来れば付近の人は避難して欲しいが。」

そして残されたのはやはり少数精鋭による地下への突入だが、地上部分の避難すら現状では出来ぬとの香港当局の煮え切らない態度に交渉した西条を余計に疲れさせた。

西条としては事が事だけに避難させて欲しいが混乱になることや観光や経済への影響を考えると、避難すら決断するにはもっと高度な政治判断が必要となるらしい。


「まあ、いいんじゃない。 後々になって私達に責任を押し付けないなら私は構わないわ。 この会議の議事録と一緒にその辺りきちんと書類で確約して頂戴。 ダメなら今からでも私は手を引くわ。」

「そうね。 私もそれで構わないワケ。」

「君達は人命が掛かっているというのに。」

最早作戦は少数精鋭による突入しかないが、ここに来て香港当局の煮え切らない態度に令子とエミは責任問題をはっきりさせることを香港当局に要求した。

元始風水盤なんてどうなるか分からないものを止めるのに、万が一何か不測の事態があった時に犠牲が出て責任追及されるのは冗談ではない。

令子とすれば別に香港当局に協力しなくともメドーサの捕縛または退治という小竜姫の依頼に絞っても構わないのだ。

唐巣は始まる前から厳しい要求を突き付けた令子とエミに頭を抱えるが、肝心の小竜姫とヒャクメは沈黙を守り令子の言葉に異議を挟まなかった。

ダメなら小竜姫の神族の権限で令子達と共にメドーサと戦えばいいだけであって、人間の責任問題の危険を犯してまでまで香港当局に協力する義理はない。

言葉として適切かは分からないが小竜姫自身、かつての小竜姫よりは人間をよく知った分だけ柔軟性が出たが同時に人間に厳しい部分も出ている。

今の小竜姫は人間というだけで無条件で守ってやるつもりもないし努力もしない連中に付き合う気もなかった。



11/30ページ
スキ