神と人と魔の狭間で

「やっぱメドーサとは戦わなきゃダメなんっすね。」

「私がここで暮らしてる理由でもありますからね。」

結局西条は引き続き香港当局と連絡を取って、メドーサの目的の調査と可能ならば鎌田勘九郎の身柄の確保を目指すことにした。

小竜姫のみならず令子も自分達が最終的には香港に行かねばならねと考えて準備してはいるが情報はあればあるだけ欲しいし、出来るだけメドーサ達を追い詰めて疲弊させたいとの思惑もある。

その一方で自宅のアパートに戻った横島は、小竜姫がメドーサと戦わねばならない時が来たことに複雑そうな表情を見せていた。

本音を言えばメドーサのことなんて放置してこのまま一緒やな平和な日常を過ごせればと思わなくもないし、何故小竜姫が戦わねばならないのか少し疑問にも感じている。


「横島さん。 もし怖いなら……。」

「あー、来なくていいなんてのはもしそう思ってても言わんで下さい。 メドーサは無理でもあのオカマ野郎と雑魚くらいなら足止めくらいしますから。」

元々好戦的な雪之丞と違い臆病者である横島は戦わなくていい道を考えてしまうが、それでも小竜姫が怖いならと何かを言いかけるとそれを遮り自身の決意を語った。

戦うなんて嫌で逃げ出したいのは今も変わらないが、自分の居ないところで小竜姫が傷付くかもしれないと考えると行かないという選択肢はない。


「期待してますよ。 横島さん。」

怖くて一緒に逃げようという言葉が何度口から出そうになったか分からぬ横島だが、小竜姫は決して逃げないのも理解している。

ならば自分も共にと自ら戦場へと赴く決意を固めた横島の少し大人の表情に小竜姫は一瞬ドキッとしてしまい、嬉しそうに横島に言葉をかける。

本来の歴史と違い強制される訳でもなくGS試験の時のようにご褒美を約束された訳でもないが、それでも横島は自ら行く決意を固めたのだ。


「正直いうと私も怖いのですよ。 まともに戦えれば勝てるとは思いますが、メドーサは私とまともに戦ってはくれないでしょう。 私も別に伊達さんのように戦うことが好きな訳ではないですから。」

そんな横島を小竜姫は優しく抱き締めると神族として武神として決して他では口に出さない本音を横島だけに語った。

恐らく雪之丞は戦う恐怖より喜びが勝っているのだろうが小竜姫は戦うことに喜びを感じている訳ではない。

かつては神族としての使命として今は横島と共に未来を掴む為に戦っているので、そういう意味では横島と大きな違いは以外になかったりする。


「小竜姫さま……。」

そして小竜姫の個人としての本音に横島は素直に驚いてしまう。

雪之丞も令子も小竜姫も決して怖いとは言わないしそんなのは自分だけだと横島は思っていたのだ。

しかし小竜姫とて一人の女性であり武神として戦う為だけに生きている訳ではない。

そんな当たり前の事実を知らされた横島は小竜姫を守りたいと思い始める。

無論力の差が違いすぎて守るなど無理なことは横島が一番理解しているが、そんな横島の想いが横島と小竜姫の未来を切り開くことになることを横島は知らない。

強さも弱さも喜びも悲しみも共に感じて横島と小竜姫は少しずつ未来へと進んでいた。


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