あの素晴らしい日々をもう一度

(ちゃんと仕事もしてたのね)

一方唐巣の報告を聞いていた令子は、昨日から様子がおかしい小竜姫がきちんと仕事もしていたことにホッとしていた。

それというのも結局小竜姫は、今日一日ずっと横島の世話を焼き応援をしていただけだったのである。

正直令子は本当に今回の依頼が危険なのか疑いたくなるくらいだったのだから。


「美神君、何かしたのかね?」

そんな令子の微妙な思いとは別に唐巣も小竜姫の何かがおかしいと気づき、令子がまた何かやらかしたのかと疑いの視線を向ける。

先程から小竜姫は真剣に話し合いにも参加しているが、同時に横島に修行をつけると言い出して横島に霊力を感じる修行を始めていたのだ。

具体的には心眼が横島の霊力を扱い、横島がそれを感じるようにするだけのごくごく初歩ではあるが一応修行である。

まあそこまでならば唐巣も疑問を感じないのだが、何故か小竜姫は笑顔で楽しそうだった。

横島が泣き声を言って自分には無理だと叫ぶと小竜姫はからかうように冗談を言ったりと、とても修行中の会話とは思えない。


「私が聞きたいくらいよ。 よく分からないけど横島君が気に入ったみたい」

自分は何も悪くないのに疑うような視線を向ける唐巣に令子は不機嫌そうな視線で返すが、二人は小竜姫に聞こえないようにコソコソと事情を話し始める。

小竜姫の何かがおかしいというのは二人が共通する意見だったが、流石に二人共神族の小竜姫に何かおかしいと面と向かって言えるはずもない。

まあ令子としては小竜姫が機嫌がいいなら好きにさせればいいと、半ば開き直っているが……。


「……小竜姫様、明日のことだけど」

「美神さんも最後まで試験を受けて下さい。 唐巣さんのおかげでメドーサの計画は潰せますが、その場で証拠を掴めたらその場で潰します」

結局唐巣と令子の二人は気を取り直して話し合いを進めるが、小竜姫は終始横島の相手をしつつの会話となった。

本当に明日は大丈夫なのかと二人が若干不安になったのは言うまでもない。



そして次の日になり例によって小竜姫と一緒にGS試験会場に到着した横島が見つけたのは、自身の無力さを悩むピートだった。


「横島さん、小竜姫様、僕は……」

横島と小竜姫の姿を見つけたピートは思わず苦悩を口にしてしまうが、横島は未来と同じくピートなら楽勝だろうと楽観的である。

小竜姫の存在により横島は未来よりも遥かに楽観的だった。


「貴方に足りないのは実力ではなく、熱意というか勝利への執念なのだと思いますよ。 本当に勝ちたいと思うならば、貴方の全ての力を使って戦い切ることです」

悩めるピートに対して楽観的な横島だったが、小竜姫は先程までと一変したように神族らしい表情になりアドバイスをする。

昨日から小竜姫らしくないほど笑顔が増えたのだが、時々以前のような凛とした表情というか小竜姫に戻るらしい。

そんな表情が一変した小竜姫に横島はポカーンとしてしまうが、ピートはハッとしたように小竜姫の言葉を自身の中でリピートする。



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