その頃横島のクラスでは女子を中心に魔鈴の話題で盛り上がっていた


「凄かったわね」

「大人の女って感じだったわ。　きっとたくさんの恋愛を経験したのね」

魔鈴としては特別な態度は取らなかったのだが、女子達には魔鈴が別次元の人に感じたほどのインパクトがあったようだ

しかも昨日や初日に弁当を持参した時などから見ると魔鈴の方が横島に惚れ込んでるように見えるため、女子達の衝撃は更に大きかったようである


「あの人じゃ、横島君が余裕出来たのも分かるわ」

「前に来た美神さんだっけ？　ちょっと性格悪そうだったもんね。　男の子って彼女次第で変わるのね」

最近横島に出来た妙な余裕の原因は魔鈴だろうと女子達は勝手に推測して噂をしていく

あれだけの女性に惚れられたら、それは余裕の一つや二つも出来るだろうと妙に納得出来たのだ

前に学校に来た令子がお世辞にも性格が良さそうに見えなかっただけに、魔鈴の評価が相対的に上がってしまう


「美神さんも根は悪い人じゃないんですけどね……」

いつの間にか魔鈴と令子を比べてる女子にピートはそれとなく根は悪くないとフォローするが、女子達は逆に性根以外は問題あると受け取っていた

実は愛子の件で令子が学校から依頼料を毟り取ったことは学校内では割と有名であり、前回唐巣と魔鈴が無料で除霊した結果令子の評価は横島の学校では悪くなっていたのだ

基本的にこの件に関しては令子は全く悪くないのだが、相対的に比べるとどうしても令子のイメージが良くなるはずはなかった

まあ無料の除霊に関しては横島や魔鈴もそこまで深く考えた行動ではないのだが、様々な偶然が重なった結果横島の学校では令子が性格の悪い守銭奴ではとのイメージが定着しつつある


「私は美神さんもそんなに悪い人には見えなかったけど……」

一方あの時令子に説得された愛子としては、女子達が噂するほど悪い人だとは思えなかったようだ

結果的に愛子を説得で納めたのは令子だったし、簡単に殺せる力があったにも関わらず説得で済ませただけに噂ほど悪い人だとは思えなかったようである


「横島サンはどう思うんですかいノー？」

「俺か？　俺からはなんとも言えん。　正直、今はめぐみが居るから全く興味ないしな」

魔鈴や令子の話題で盛り上がるクラスだが、当事者達に一番関わりがある横島は何故かずっと無言だった

そんな横島に令子の事に対する意見をタイガーが求めるが、横島は詳しい話を避けて興味がないと冷たく告げるだけである


（あの人ほどタチが悪い人は居ないよ）

横島は令子に対する個人的に意見を静かに飲み込む

今の横島にとって令子はとにかくタチが悪いだけであった

令子と決別して九年近くになるが、今だに令子への憎しみや恐怖が心に残っている

それは未来においては魔鈴達のおかげでようやく薄れた感情だったが、この時代の令子を見てると横島は令子への負の感情が再び蘇ってしまうのだ


（横島君……？）

一方愛子は令子に対してあまりにも冷たい横島に、僅かに違和感を感じていた

それは以前の横島とあまりに違い過ぎる態度故の違和感だったが、何か言葉に出来ない不安も感じてしまう

しかし愛子はそれを横島に尋ねることは出来なかった