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横島のクラスの女子達と親しくなった魔鈴だったが、次の日は一転唐巣の教会で険しい表情を見せていた


「やはり地上におびき出すしかないか」

令子の調査が終了した事で死津喪比女に対する話し合いが行われてるのだが、令子と魔鈴の微妙な関係と空気に唐巣はストレスを感じつつも二人の間に入るように進行をしていく

調査結果を元にいろいろ考慮した令子だったが、結局は彼女も地上におびき出す方法が一番てっとり早いとの結論だった


「周辺の山々をまるごと結界で封じるのも理論的には不可能じゃないけど、現実的に考えると難しいわ。 そもそも封じたからと言って死津喪比女が滅ぶとは限らないでしょうし」

令子としては相手に気付かれる前に再封印したかったようだが、おキヌを元居た地脈に再度括る以外の方法は難しかった

加えて令子は封印しても死津喪比女が滅ばない可能性を考慮している

仮に地脈が力の源だとしても最低限の生命維持には影響がないのではと考えていたのだ

おキヌを再度括るなど考えられない令子としては、この際確実に退治する方法を選びたいらしい


「私も再封印は難しいと思います。 再封印には相手も対抗策を考えてるでしょう。 人の居ない山でおびき出して退治するのが最善だと思います」

令子の意見を聞き魔鈴も意見を語るが、話が再封印の方向に行かないことにホッとしている

妖怪をよく知る魔鈴故に、放置出来ない妖怪が居ることもよく理解していた

理性と自我がきちんと存在する妖怪ならば違うのだが、なまじ力と本能に支配された妖怪は人間のみならず理性ある妖怪にとっても害でしかない

死津喪比女は地霊なので大地の力を源にするが、自分の力量以上の力を得たが為に理性を失った可能性もあるのだ

そもそも大地の力は一個人が得るにはあまりに大きく危険な力なのだから


「では退治の方向で構わないのだね? あとは具体的な方法と予定日時に関してだが……」

再封印となればそれなりに準備と専門のGSの助っ人が必要だが、退治となれば至極簡単である

最も強力な地霊に対する装備はこちらも必要不可能だが、封印よりは遥かに準備に時間がかからない


「私はあと一週間ってとこね」

結局その後三人が決めたのは、死津喪比女をおびき出す方法と決行日時だけである

おびき出す方法はシンプルな物として現れたら早い者勝ちといういい加減な戦法となったが、令子も魔鈴も相手に切り札を言わない為に方向性のすり合わせだけで終わってしまったのだ

まあ魔鈴としては死津喪比女の情報を文献以上言えるはずもなく、死津喪比女の本体が地中から出て来ないという一番重要な未来情報も言えるはずがなかった

ただ令子としては江戸時代の道士が正攻法で倒せなかったことは理解しており、そこから推測した準備をしてるらしい


(やはり私は貴女が好きになれませんね)

話し合い自体は唐巣のおかげで揉めることもなく順調に終わったのだが、令子のスタンスというか価値観が魔鈴はやはり好きにはなれなかった

それは敵か味方か敵ならば容赦しないというシンプルなモノだったが、魔鈴や横島の価値観や生き方とはあまりにも違うモノだったのだから


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