スリーピング・ビューティー!!

数日後、令子は事務所のデスクで不機嫌そうに考え込んでいた

あれから冥子と共に現地で調査した令子だったが、結論は魔鈴と同じで限りなくクロに近い現状だということである

結果から言うとおキヌを地脈から切り離した事が問題だった可能性が高い

まあ令子には令子なりの言い分はあるが、重要なのはそれより死津喪比女をどうするかだった


「問題はどうやって奴を地上に引っ張り出すかよね」

死津喪比女の再封印及び退治には、一部でも死津喪比女を地上におびき出すしか方法がない

冥子の式神の霊視ですら正確な位置を掴めないほど、地中深くに存在する相手を退治する方法など令子にはないのだ


「あそこから東京を攻撃する力なんて本当にあるの?」

令子の悩みは尽きないが、死津喪比女の力量にも悩んでいる

文献の通りだと人骨温泉郷のある山々から江戸に地震を起こしたとあるが、そんな長距離攻撃を出来る相手だとすれば流石に令子も手に余る可能性が高いのだ

まあ令子は文献をそのまま信じておらずある程度誇張して書かれた部分があると考えているが、それでも相手が弱いはずはない


「問題はおキヌちゃんよね……」

いろいろあるが令子の一番の悩みはおキヌに真実をどう伝えるかである

今のおキヌはそれなりに幸せであり、わざわざ自分の死に関わる過去を知らせていいのか令子は迷っていた

いかにおキヌがベテランの幽霊とはいえ、自分の死の事で苦しまないはずなどないのだから……

いっそ知らせぬままに解決した方がいいのではと令子は考えはじめていた



一方横島の学校では、横島と魔鈴の関係が完全に全校生徒に広まっていた

放課後や休日に学校の近所や商店街で、一緒に歩く二人の姿がよく目撃されていたのだ

腕を組み密着した様子で楽しげに歩く横島と魔鈴の姿に、最早横島を気に入らない連中ですら否定出来ないほどの仲睦まじい様子だったのである


「今夜は何が食べたいですか?」

「豚肉の料理がいいな~」

そしてこの日は、学校が終わる時間に合わせて待ち合わせした横島と魔鈴が一緒に商店街に買い物に来ていた

いろいろと忙しい日々だが、二人は出来るだけ一緒に居る時間を確保するようにしている

まあ実際は学校以外はほとんど一緒に居るのでそれほど気にすることではないのかもしれないが、二人がこの時代の自分として今を楽しもうと考えた結果だった

ちなみに二人が同棲して九年が過ぎ結婚からも数年が過ぎたが、横島と魔鈴の関係は相変わらずアツいままである

流石に一緒に居る時間と共に親密さが増して夫婦らしくなった面もあるが、付き合った当初からの変わらぬ部分も結構残っていた

それにどちらかと言えば横島よりも魔鈴の方が、現在の状況を楽しんでるかもしれない

横島に出会うまでまともに恋愛をして来なかった魔鈴は、高校生の横島と付き合うことを普通に楽しんでいたりする

高校生活にいい思い出のない横島に幸せになって欲しいと考えつつも、自分もしっかり現状を楽しんでいた


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