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「魔を拒みし聖なる精霊達よ。 私に力を貸して……」

ビルの中に入った魔鈴は杖を手に持ち僅かな霊力を用いて悪霊を浄化する結界を周囲に張るが、唐巣と令子は始めてみる魔鈴の魔法に驚きポカーンとしてしまう

GSが結界を張る方法はいくつもあるが、魔鈴の方法は言魂を用いた呪文を唱えるだけのあまりにシンプルな方法だった

しかも近寄った悪霊が浄化される結界など聞いたことがない

まあ秘密は杖にあり当然唐巣や令子も見知らぬ杖に注目するが、除霊の最中に尋ねるつもりはないようだ


「では行きましょう」

結界を張った魔鈴達に近寄れる悪霊はなく、魔鈴は元より横島と雪之丞も何もすることなく歩いていく

令子にとってその光景はあまりに非現実的であった

圧倒的な技術の差はいかに令子が魔鈴を嫌いでも理解してしまう

加えて魔法という骨董品のような技術を、除霊において実践的に使える現実に令子は強い衝撃を受けていた


「先程も話しましたが、まずは外部から悪霊が入ることを止めます。 今回は結界札を用いてビル全体に結界を張ります」

途中横島と雪之丞に指導しながら進む魔鈴だったが、ビルの東西南北に結界札を張りビル全体を包む結界を張る

本来ならば悪霊から身を守りながら進まねばならないのだが、浄化結界の為に全く障害がないまま結界を張っていくのだから唐巣と令子は最早驚きを通り越していた


「結界を張り終えましたので、後は中に居る悪霊を除霊するだけですが…… 私の実力が見たいようなので今回は私がやりましょう」

横島はともかく雪之丞は少し戦いたそうなのだが、令子をチラリと見た魔鈴は自信ありげな表情で一人でいいと言い切る

その表情に令子は更に不機嫌そうになるのだが、魔鈴は気にするそぶりもない


「悪霊とて決して好きで暴れてる訳ではありません。 彼らを苦しめる陰の気を浄化してやれば彼らは自発的に成仏してくれるでしょう」

一応とはいえ横島と雪之丞に教える立場を取る魔鈴はそこまで説明した後に再び杖を手に持つ


「魔を拒みし聖なる精霊達よ。 私に力を貸して。 闇に捕われし者達に光の祝福を与えたまえ」

それは嘘のような現実だった

杖の宝玉が輝き出し凄まじい光を辺りに放つと、あれほどウヨウヨとしていた悪霊達が綺麗さっぱり成仏されているのだ

まるでネクロマンサーのように一瞬で大量の悪霊を浄化した魔鈴には唐巣ですら言葉がでない

この悪霊を浄化した光の魔法だが、実は魔鈴が横島と会う前から得意な魔法の一つだった

まあ杖がない場合は複雑な魔法陣を大地に書かねばならない欠点がある魔法なのだが、杖のおかげで一瞬でビル全体の悪霊を成仏させている

その凄まじい威力に何も聞かされてない雪之丞も唐巣達と同じくポカーンとしていた


「では各階を確認して本日は終了になります。 今後の対策については依頼人とも相談しないとダメですからね」

横島があまり目立たないようにしてる為に魔鈴は一人淡々と進めるが、本来ならば複数のGSが共同で解決する依頼が僅か三十分ほどで終了した衝撃は令子にとっては始めての経験である



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