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「先生が来たって事は、先生と魔鈴もこの件に一枚噛むって訳ね」

しばらく無言だった令子はゆっくりと目を開くと、唐巣が来た理由を当てて不機嫌そうな表情になる


「君の実力は理解してるが、話を聞く限りだと一人だと厳しいだろう。 魔鈴君の実力は詳しくはしらないが足手まといにはならないと思う。 おキヌ君の事を考えれば、用心に越した事はないと思うが」

優しく諭すような唐巣に令子は更に不機嫌そうな表情にはなるが、即座に否定はしなかった

唐巣が語った話が本当ならば令子自身も一人だと厳しいと考えている

これが普通の仕事ならばすぐに断るのだが、おキヌが関わってる以上断ることは出来ない訳だし


「一つ条件を出すわ。 この依頼を魔鈴が解決出来たら、今回に限り構わないわ」

少し引き攣った笑顔の唐巣に令子は思いもよらない提案をしていた

それは元々は令子が受けた除霊依頼だったのだが、魔鈴の実力を確かめるという理由で魔鈴にその依頼を受けさせるつもりらしい

無論最低限の経費以外の報酬は令子が貰うというとんでもない提案だったが、令子としてはそのくらいふっかけないと一緒に仕事をするなど考えられないようだ


「君ねぇ……」

「実力もはっきりしない相手と仕事なんて出来る訳ないでしょ。 私は別に嫌ならいいのよ」

力試しの理由で魔鈴にただ働きをさせようとする令子に唐巣は深いため息をはくが、一度言い出したら聞かないことはよく理解している

まあ唐巣自身も魔鈴の実力が見たかったのだが、それにしても令子のやり方は褒められた物ではない

ただ令子としてもギリギリの妥協点であったことは唐巣も理解している

魔鈴も唐巣も除霊には参加するが依頼人の居ないこの件ではもちろんタダ働きになるのだ

令子には当然魔鈴への苛立ちや憎しみはあるが、反面でせっかくタダで働くと言って来た唐巣と魔鈴を使わないのはもったいないとも感じていたのも確かだった

仮に唐巣が語るような厄介な相手とおキヌが繋がっていた場合はおキヌを救うには令子は逃げられないため、唐巣や魔鈴を断った後で助っ人が欲しくなった場合は令子が自腹を切らなければならなくなる

その場合の損失を考えると、ここで拒絶するのは躊躇してしまうのだ

結局利益と気持ちの板挟みだった令子は先に魔鈴にタダ働きをさせて利益を得る事で、仮にこの件がガセネタでも自分は損をしないように考えたのだった


「しかしこの依頼はあんまりじゃないか? 依頼料一億の十階建ての幽霊ビルの除霊はいくらなんでも……」

令子が魔鈴に除霊させようとしていたのはビル一棟丸々除霊する依頼である

普通のGSならば何人も集まって共同で解決するような案件なのだ

流石に唐巣がそれはかわいそうだと言うが、令子はこれ以上譲るつもりはなかった


「このくらい解決出来ないようなら邪魔なだけよ。 横島君とカオスが居るんだし死にはしないわよ」

お手並み拝見と言い出たげな令子に、唐巣は何度目かわからない深いため息をはく


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