スリーピング・ビューティー!!

その日の午後、さっそく唐巣は令子の元を尋ねていた

あの後唐巣と魔鈴は少し話をしたのだが、結局最初は唐巣が一人で令子に話すことになっている

唐巣もまた魔鈴と令子を突然合わせてもいいことがないと考えていたようだ


「珍しいわね。 先生が突然来るなんて……」

突然尋ねて来た唐巣に、令子は金にならない厄介事はゴメンだと顔に出ている

流石に露骨に嫌な顔はしないが、唐巣の依頼に関わっても金にならない可能性が高いのだから


「少し厄介なことがおきてね。 ところでおキヌ君は?」

「おキヌちゃんならお使いに行ってもらってるわ」

おキヌが居ないのを確認した唐巣はホッと一息ついて魔鈴から聞いた話の説明を始める

出来るだけ令子がキレないように柔らかくオブラートに包んで話す唐巣の苦労は言わなくても分かるだろう

しかしその内容には流石に令子も固まってしまい険しい表情になっていく


「その話、本当なの?」

ある程度話し終えると令子は多少胡散臭げに唐巣を見ていた

そもそも令子は魔鈴がおキヌの件を調べた事が気に入らない

人の身辺をコソコソと嗅ぎ回っているのかとの疑いを感じている


「美神君も知ってるだろうが、彼女は根っからの研究者なのだろう。 おキヌ君ほどの霊が神になれないのは些か不自然ではある。  横島君の話から彼女が興味を持ったのは特別不思議ではないと思うよ」

魔鈴は唐巣に自身の好奇心からこの件を調べたと語っていた

中世の魔法以外にも気になることは調べるようにしてると語ったのだが、魔鈴が名の知れてる研究者な為にその言葉に違和感はなかったのである


「腹黒魔女ね。 何を考えているやら」

横島の件以来どうしても魔鈴が気に入らない令子は、唐巣のように魔鈴を信じることは出来ないようだ

実際に横島が辞める際の賃上げに関わる挑発的な態度を令子は根に持っている

あの時令子は賃上げだと勘違いして早々に辞めることを認めたが、あれが魔鈴の策略なのだとすでに気付いていた

まあ令子としては横島が辞める件はどうでもいいと考えようとしているが、魔鈴にハメられたと感じることは面白くない

ただ魔鈴としては令子がいかに横島に執着してるのをよく知ってるが故に、早々に関係を断ち切る行動に出たのだが……


「まあ彼女の評価は置いておくとして、この件は早急に調べて対応しないとだめだろう。 文献によると相当厄介な相手らしい」

魔鈴に対する不信や怒りを露にする令子をなだめつつ唐巣は問題の本筋に入っていく

もし本当に魔鈴の予測通りだとすれば、大変な大惨事になるのだから



そのまま令子はしばらく無言のまま目を閉じて考え込んでしまう

実はおキヌの神格化については令子も以前に少し疑問は感じていたのだ

令子とて土地の神になる際に才能が必要などとは聞いたことがない

仮に悪霊に近い霊を土地の神にすれば、それは土地が荒れ果てて荒廃するだけなのである


まあ令子はしばらくおキヌの様子を見て問題なさげなので、それ以上気にしなかったが……



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