スリーピング・ビューティー!!

「仕事で彼女と温泉行けるなんてかなりラッキーね」

「まあラッキーっていえばラッキーなんだけどな。 俺としてはGSよりも小さな飲食店でもやって普通に暮らしたいよ」

周りの女子が僅かに顔を赤らめ横島と魔鈴の関係を突っ込んで聞こうか悩んでいるが、愛子はどちらかと言えば温泉に興味があったようだ

やはりこの頃の愛子は学校の外への憧れが強いようである


「えっ!? GSになるんじゃないの?」

少し前に難関と言われるGS試験を一発合格した横島のGSを辞めたいような発言に、女子達は驚きの声を上げてしまう

ピートの話から横島が将来的には一流のGSも夢ではないと知るだけに信じられないようだ


「GSにはなるよ。 ただGSはリスクが高いからな。 一生続けたいとは思わねえよ」

GSと言えば一獲千金イメージが強い女子達に、横島は苦笑いを浮かべて現実の厳しさを語り始める

高い報酬には当然理由があり、一般人が考えるより遥かに大変だと教えるが彼女達には半信半疑なようだった



その頃魔鈴は、さっそく唐巣の教会を尋ねていた

歴史的に死津喪比女が活動するまではまだ日にちがあるが、正直現状でも危険なほどの力は溜め込んでいるため一日も早い退治が必要な状況なのである


「地霊と山の神か……」

横島からおキヌの話を聞いた魔鈴がその過去に少し疑問に感じたので、独自に調査した事を告げて協力を求めたのだ

魔鈴の話に唐巣は驚きを隠せないが、令子が迂闊に山の神を取り替えたことを聞くと険しい表情でため息をはく


「大地に異変が起きてるのは確かです。 おそらくおキヌさんは地霊を封じる楔のような役割だったのでしょう」

魔鈴は令子の行動に対する賛否を避けて事実のみを伝えていた

正直令子の行動は迂闊ではあるが、完全に間違ってる訳ではない

ただ唐巣としては地元の調査や了承もなく、令子が勝手に土地の神を取り替えた倫理感に頭痛がするようだったが……


「おキヌ君の過去に関わるなら美神君に知らせない訳にはいかないね」

魔鈴が頼って来た理由に唐巣はすぐに気付いていた

おキヌの過去に関わる問題ゆえに令子に知らせぬ訳にはいかないが、横島の件で魔鈴に令子がいい感情を持ってないことを唐巣はよく理解している

加えて魔鈴も令子にあまり関わりたくないのだろうと気付いく


「わかった。 私から美神君には話を通そう。 人の命を使わねば封じれなかった地霊となると一筋縄ではいかないだろうからね」

少し考え込んだ唐巣だったが、最終的には魔鈴に協力して令子への橋渡し役を引き受けることになった

ちなみに唐巣が少し悩んだのは魔鈴の実力についてであり、唐巣は魔鈴の実力や能力をまるで知らないのだ

中世ヨーロッパの魔法の研究家としては有名な魔鈴だが、正直GSとしての実力は全く知られてない

まあ並みのGSよりは実力があるのは理解してるが、具体的な実力を知らない為に今後の対応に少し悩んだのである



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