変わりゆく日々

「いい子ですね」

「この頃のおキヌちゃんには世話になったんだよな。 生き返った後は美神さんの影響もあってアレなんだけど……」

自分の気持ちを封じてまで横島を励まして帰ったおキヌに、魔鈴と横島は言葉にならない複雑な想いを抱く

先程魔鈴も感じた罪悪感を横島も感じてしまうのだ

令子とはお互いの問題行動で貸し借り無しで辞めても問題ないと考えているが、おキヌには借りがある


「今は彼女の復活には全力を尽くさねばならないでしょう。 歴史のズレが悪い方向に現れれば……」

おキヌには幸せになってほしいと願う横島を見て、魔鈴は死津喪比女の事件に全力を尽くす必要性を強く感じていた

歴史のズレや修正力については現在カオスが研究しているが、あまり細かな事件には働かないだろうとの予測が出ている

世界の行く末に関わるような大きな流れは変えれない可能性が高いが、横島と魔鈴の神魔クラスの力があれば個別の事件くらいは変えれるだろうとのことだ

ただ問題は歴史の改編が横島や魔鈴にコントロール出来ないことだった

おキヌの復活に絡む事件に関しても横島達はGS試験後に横島の記憶を頼りに対策や問題点を洗い出していたが、未来での結果は薄氷を踏むほど危うい偶然の上での結果だとの結論である


「それで奴の方は?」

「戦わねばならないでしょう。 すでにかなりの力を溜めてますし、穏便に済ませるには三百年の時が邪魔すると思います」

横島と魔鈴は死津喪比女との戦いを想定しつつも、戦いを回避する方法も模索していた

しかし三百年の苦しみを味わったのは、おキヌだけではなく死津喪比女も同じなのだ

加えて地脈から大量の霊力を取り込んでる死津喪比女の理性は、すでに存在しない可能性が高い

少なくとも戦いを回避することは不可欠だった


「じゃあ問題はおキヌちゃんか」

「遅かれ早かれ彼女は真実を知ることになるでしょう。 まあ上手く立ち回れば復活の時期を彼女自身が選べる可能性もありますが……」

横島と魔鈴にとっては死津喪比女の解決よりも、おキヌの処遇の方が難しい

魔鈴としては未来の時のように霊体を用いた自爆攻撃を阻止してギリギリでの復活は避けたいとは考えているが、かと言っていつでもいい訳ではないのだ

霊的環境を考慮して復活に適した日を選ぶのが最善だと考えている

それでもおキヌに最低限の心の準備をする時間は与えたかった


「美神さんがなんて言うかだな」

「かやの外という訳にも行きませんからね」

おキヌの未来に関わる死津喪比女の事件を横島達が勝手に解決しておキヌを生き返らせると、令子が黙ってないのは明らかである

他人には冷たい令子だがおキヌだけは別格なのを横島も魔鈴も理解していた

これほどの問題で令子を無視しておキヌを生き返らせれば、どれほど令子に怨まれるかわからない

かと言って令子に好き勝手させると被害が拡大する不安もある

横島と魔鈴は令子をどう関わらせていくかで悩んでいく


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