変わりゆく日々

一方新しい助手が決まらない令子は、この日唐巣の教会を訪れていた


「誰か助手になってくれる人知らないかしら?」

横島が辞めて以来ずっと自分で荷物を準備して運んでいる令子は、日々の疲れとストレスを感じている

加えて見張りや囮をしていた横島が辞めた影響は確実に令子の負担となり、以前より確実に時間がかかるようになっていた

総合的な依頼をこなすスピードはさほど変わってはないものの、全てを自分でしなけれならない現状は令子の体力や霊力を消耗して確実に減収に繋がっている

さっさと新しい助手が決まるといいのだが、なかなか助手が定着しないのだ


「いい加減素人を除霊現場に連れて行くのは辞めたまえ。 横島君のように順応するタイプは滅多にいないよ」

助手は素人でなくてはダメだと言う令子の方針に、唐巣は呆れた口調で素人を使うのを辞めるように告げる

基本的に一般人を何の準備もなく除霊現場に連れて行けば、パニックになったり冷静さを失って当然なのだ

元々除霊に素人を使おうと考えるGSは業界でも少なく、仮に他のGSが素人を使うならばそれなりに教育してから使うのが普通だった

しかし令子は事前の教育も説明もほとんどなく除霊現場に連れていくため、誰も馴染めずに辞めてしまうのである

あまりに助手が見つからない為に流石の令子も最近は時給をそこそこ上げて肉体労働並みにはしたのだが、結局誰も続かずに現在に至っていた


「人に教えるなんて面倒な事したくないの。 だいたい将来商売敵になる人間を使っていい事なんかないわよ。 昨日だってちょっと囮にしただけで逃げ出すなんて根性がない男だったわ」

業界の人間に関わりたくはないし、人に物を教えるのも面倒だと考える令子に唐巣の表情は引き攣ってしまう


「横島君は君と離れて正解だったのかもしれないね」

変わらぬ令子と変わった横島を比べた唐巣は、つい本音がポロっと漏れてしまった

別に令子を否定はする訳ではないが、横島が令子の元に居てもきっとろくな成長をしないだろうと考えてしまうのだ


「あんな馬鹿でスケベなだけのガキがどうだって言うのよ」

横島の名前を聞いた令子は瞬時に怒りの表情に変わる


「横島君の成長は普通じゃない。 まるで以前から霊力を使えていたかのように感じる。 ピート君の話だと普段の行動も微妙に変わったそうだ」

「……まさか前世の影響だとでも言いたいの?」

唐巣から横島の現状を聞いた令子はあからさまに不愉快そうな表情を見せるが、横島が変わった原因の可能性に気付いていた


「それは私には分からないが、霊能力の覚醒で性格が変わったという話はたまに聞くだろう。 横島君の変化は他に理由が浮かばないのは確かなのだよ」

横島の変化の原因が前世か何なのかは不明だが、突然強い霊能力に覚醒すると性格が変わったという前例は確かに存在するのだ

GS試験とメゾピアノの一件を見た唐巣は、素人が覚醒したにしてはあまりに強い霊能力が横島の性格に影響を与えた可能性が高いと考えている

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