変わりゆく日々

「それはいくらなんでも可哀相よ」

突然女子が自分達の事を話題に上げたためドキドキする五人だったが、一人の女子が可哀相と告げると五人は僅かに嬉しそうな表情をする


「それもそうね。 比べてゴメンね、横島君。 あの連中が相手なら横島君の二号の方がずっといいもんね」

僅かに喜んだ五人をどん底に落とすかの如く横島に謝る女子に、周りの女子はクスクス笑ってしまう

話をけしかけた女子は金に目が眩んだと言われた件を今も許せずに怒っているのだ

周りの女子もそれをわかっていて話を合わせてるらしい


「なあ愛子、俺どうすればいい?」

「私に言われても……、そもそも謝らない彼らが悪いと思うわ。 横島君が誰と仲良くしようが彼らがとやかく言う事じゃないもの」

二号より嫌だと言われた五人衆は落胆の表情のままに俯いてしまうが、女子達の怒りはまだまだ収まってないらしく誰も声をかけないで無視が続く

そんな空気に横島はたまらず愛子に助けを求めるが、愛子ですら彼らに同情する様子はない


(責められる方も辛いが、逆の立場も結構辛いな)

女子達により強制的にに比べられる立場になってしまった事で、横島はかつてのピートの立場を思い出し苦笑いを浮かべてしまう

本人が望む望まないに関わらず比べられて怨まれるのは、何か割に合わない気がしてならないのだ


(本当はピートの立場のはずじゃあ……)

一方本来横島の代わりに比べられるはずのピートだが、横島の周りにいる女子とは別の女子達と普通に楽しげに話をしていた

横島は歴史のズレと変化に複雑な想いを抱えてしまうのは言うまでもない



「横島君やっぱり手慣れてるわね」

「彼女と二人でイチャイチャしながら料理してる姿が目に浮かぶようだわ」

煮込む鍋の火加減を調節してたまに掻き混ぜているだけの横島だったが、やはりその行動は目立つようである

まあそれだけ女子が横島に注目してるだけだとも言えるが、いちいち注目されてあれこれ言われるのは正直あまり嬉しくない

その後はそのまま出来たカレーを昼食代わりに試食するのだが……、まるで狙ったように失敗したのは五人衆だった


「野菜が固いぞ」

「しかも焦げ臭くてダメだ」

「残飯にカレー粉を入れたらこんな味になるんだろうな」

「カレーで失敗するなんてある意味凄いな」

女子の会話に聞き耳を立てていた事も影響したらしく、五人はカレーで失敗すると言う偉業を成し遂げている

しかも最低一皿は完食しないと大幅に減点すると教師が言い出した為に、彼らはバツゲーム状態だった


「どこもなんか一味違うわね」

「同じ材料とカレー粉のはずなのに……」

一方五人以外のクラスメートはそれぞれのカレーを味見しつつ楽しげに会話をしていく

他のグループは横島達以外のグループも料理が得意な人が居たらしく、それぞれに僅かな個性が出るくらいみんな成功したようだ

そんな横島が初参加の調理実習は、一部の者以外は楽しく終わったようである


ちなみに五人はお腹を壊すことだけはなく、なんとか完食したらしい

彼らに救いの手が差し延べられる様子は今のところ皆無だった

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