変わりゆく日々

その後も賑やかな調理実習は順調に進み、一部の者達を除いたグループは煮込みに入って一段落していた


「人間って不思議よね、あの包丁裁きを見てると横島君でもイケメンに見えて来る気がするわ」

「似合わないことして悪かったな。 イケメンがいいならピートでも見てろよ」

鍋の様子を見つつクラスメートはそれぞれに雑談しているのだが、横島を見る女子の視線のごく一部が変化している

そんな中で一人の女子が意味ありげな笑顔で横島にからかうような褒めるような言葉をかけるが、横島はからかってると受けとったようだ


「あら私は褒めたのよ。 さすがは年上美人を落とした横島君よね。 次に横島君の毒牙にかかるのは誰かしら?」

「褒められたとは思えんが…… それにその毒牙ってのはなんなんだよ」

褒めてると言いつつからかってる口調の女子に横島は疲れたような表情を見せるが、相手は楽しそうだった

横島も冗談なのは理解してるが、女子にそんな冗談を言われる現在の自分にはやはり戸惑いも感じている


「横島君のことだから、そろそろ二号や三号を狙ってるんでしょう?」

「あー、横島君なら考えてそうかも。 可哀相に二号や三号だとわかっていても断れない子を狙ってるのね」

「うわー、横島君って女の敵ね!」

「でも案外二号や三号さんは横島君を庇いそうよね。 横島君は悪くないんです!みたいにさ」

目の前で語られるガールズトークに横島は若干引き攣った表情になるが、助けなど入る訳はない

しかも何故かモテる男扱いされて進むトークは余計に理解に苦しむ


「お前らさ、俺がモテないのはお前らが一番知ってるだろうに。 それに俺は二号も三号も探してねえよ!」

女子のテンションに若干ついていけない横島だが、妙な噂は困るとキッパリと否定する

しかしそんな態度もまた彼女達には好印象を与えてしまうのだが、横島は理解してない


「モテないアピールしてる横島君に同情したら毒牙にかけられるのね。 しかも彼女と同じくらい好きだって言われると私でも迷うわ」

揚げ足を取るかのごとく無理矢理話を持っていく一人女子の言葉に、周りは更に盛り上がる

まるで自分が誘われたようにわざと話を進める女子達に、横島は最早返す言葉が浮かばない


「なんで横島がモテてるんだ?」

一方横島本人はからかわれてると感じているが、吊るし上げ五人衆から見れば横島がモテてるように見えていた

横島はともかく女子達は好意的な表情だし言葉の割に嫌がってないのだ

端から見ると横島がモテてるように見えてしまう



「じゃあ、横島君の二号とあの連中の彼女になるのはどっちがいい?」

五人衆が横島を睨むのを横目で確認した一人の女子は意味深な笑みを浮かべて、突然妙な二者択一を他の女子に問い掛ける

彼女は昨日一緒だった一人であり、今朝五人衆に金に目が眩んだと言われた女子だった

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