変わりゆく日々

「横島の癖に……」

一方クラスで完全に孤立した吊るし上げ五人衆は、調理実習にも関わらず誰も料理が出来ずに目茶苦茶になっていた

教師は教師でさっさと女子に謝れと五人に言うだけで、それ以上なにも構わないために余計に孤立している

そんな中で最後に捨て台詞を吐いた男はまだ横島を睨んでぶつぶつと文句を付けてるが、他の四人は現状に困っていた

彼らは別に横島ととことん決着を付けようと覚悟を決めていた訳でもなく、ただ横島が気に入らないと言うだけで吊るし上げに熱心だったのだ

以前ならばあんな展開になれば、横島が男子に責められて笑われて終わるはずだったのだから

そんな彼ら四人からすれば、何故今回は女子達があれほど怒るのか理解出来ない

元々彼らからすれば横島が嫌われてるのが当然であり、自分達はクラスを盛り上げてるくらいの感覚しかないのだからタチが悪かった

まさか自分達の普段の行動から女子に呆れられていたとは、全く思いもしないようである


「お前が女子に余計な事言ったのがまずかったんじゃないのか?」

「そうだ、なんで女子にあんな事言ったんだ」

「俺が悪いのか? だいたい横島が二股かけてるだの浮気して調子に乗ってるって話持ってきたのはお前だろ!」

和やかな調理実習の中で孤立する五人衆はとうとう仲間割れをして責任の押し付け合いを始めてしまう



「意外な特技よね~ でもよく考えると横島君は一人暮らししてたんだっけ? 結構真面目に自炊してたんじゃない?」

調理室の隅で五人衆が口喧嘩を始めているが誰も見向きもしないままである

中立の男子はさっさと謝ってしまえばいいのにと呆れているが、誰もがとばっちりを避けていた

そんな中で包丁捌きの注目を集めていた横島には、割と真面目に一人暮らししていたのではとの憶測が広がっている

元々クラスメートは横島の私生活などほとんど知らないし、以前におキヌを彼女と勘違いしてアパートに行った者が居るくらいなのだ

実は影ではGS試験に向けて地道に努力して頑張っていたのではと、考える者も多くなっていた

以前の横島ならば誰一人としてそんな事を考えなかったのだろうが、GS試験合格と美人の彼女が出来た事実は横島の予想以上に周りの見る目を変えている

世の中の成功者にはありがちな事なのだが、結果的に成功すると過去が美化というかいい方に受け取られる事はよくある事なのだ

なまじ以前の横島をほとんど知らないだけに、GS試験を境に大人っぽくなったのは隠れた努力が実ったとからだ勘違いし始めている

全ては偶然と運命の悪戯がもたらした結果なのだろうが、横島の環境が変わっていくのは止まらない


「ところでなんで調理実習でカレーライスなんだ?」

「あの先生自分の好物を作らせるのよ。 先生の好みだと評価が高いみたいよ」

周りから注目を集める横島は多少居心地悪そうに調理するが、周りからの注目は変わらなかった



14/21ページ
スキ