変わりゆく日々

全く相手にもしない横島の態度が彼らの怒りに火を付けたのは、端から見れば明らかである

同じクラスメートとはいえ横島としては元々話もロクにしない者なので当然の対応なのだが……


そのまま微妙にピリピリした空気のまま一日は始まるが、変化はすぐに現れる

三時間目の授業で調理実習があった時に男女混合でいくつかの組分けをする事になったが、吊るし上げにした者達だけは誰も組みたくないと女子が拒否をしてしまったのだ

担当教師は最初は誰かが組むように促すのだが、女子だけではなく他の男子すらも彼らとは組みたくないと揉めたため諦めてそのまま吊るし上げにした五人でさせることにしてしまう

あの後女子は吊るし上げにした者達に対して完全無視を決めてしまい、まるで居ないような扱いなのだ

そんな状況にびびった他の男子が彼らとの関わりを避けたため、彼ら五人は孤立している


(女を怒らせると怖いのはここでも同じか……)

そのあまりに露骨な女子達に横島は複雑な心境であった

未来の歴史ならばピートに対して嫉んだ横島がイジメる発言をして女子達の怒りを買ったが、あの時はピートと横島の仲がよかったためにさほど酷い結果にはならなかったのだ

そういう意味では彼らの立場は横島にとって人事ではない


ただ根本的に違うのは横島はピートを見下したりしなかったが、彼らは横島を見下してる点である

あの時の横島の行動はピートにとってクラスに馴染むきっかけとなった事も事実なのだ

横島は全く意図してなかったが、あの横島の行動によりピートに対してのクラスメートの怯えや壁がかなり無くなったのは事実である


しかし今回彼らは横島のみならず女子達にまで暴言を吐いた事実が重かった

加えて最後の捨て台詞が決めてとなり、女子は全員が彼らを完全無視している


(歴史ってのは簡単に変わるんだな。 だけど俺があいつらを助ける理由はないか)

まるで自分の替わりに嫌われたような彼らに横島は多少悪い気もするが、かと言って助けたいなど全く思わない

歴史的に見れば替わりに嫌われたように見えなくもないが、根本的には自業自得なのだ

それに横島は、何故自分の立場がこれほど変わったのか理解出来ず戸惑いが相変わらず残っていた


「横島君包丁の使い方上手いわね」

「なにその皮の薄さ……」

一方横島が考え事をしてる間も調理実習は続いており、考え事をしながら野菜の皮を剥いていた横島はいつの間にか注目を集めていた


「俺は皮剥きだけは得意な男なんだよ」

長年染み付いた癖というか感覚からつい普通に皮剥きしていた横島だったが、その丁寧で早い皮剥きにクラスメートは驚きの表情で集まっていたのだ

その状況に横島はとっさに適当な事を言ってごまかすが、それを信じる者は少ない


「そういえば横島君って調理実習に出るの初めてだったわよね」

「実は料理が得意だとか……」

予想外の横島の包丁捌きにクラスメート達は実習そっちのけで噂話をしていくのであった
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