（最低限の身だしなみの必要性は分かるが、こうも反応が変わるもんか？）

横島自身も身だしなみの必要性はきちんと理解している

性格上横島はあまり気にはしないのだが、流石に十年近くレストランで働いていると嫌でも身だしなみを気をつけるようになっていた

この辺りは魔鈴が時間をかけて横島を教育したとも言えるが……

横島自身は社会人として当然の身だしなみをしてる程度の意識だったのだが、未来の時との愛子や女子達の反応の違いには驚きを隠せない

クラスメートに対するいい印象がほとんどなかっただけに、彼女達の僅かな反応の違いにも横島は驚いてしまうようだ


「人生ってわかんないものよねー　ちょっと前まで男子に馬鹿にされてた横島君が、今じゃ勝ち組で逆に嫉まれてるんだから」

「わかるわ～　凄い嫉んでる連中いるわよねー　年上の美人の彼女が現れて将来は億万長者確定だもの。　気持ちは分からない訳じゃないけどみっともないわよね」

横島が僅かに考え込んでる間にも女子達のトークは止まらない

横島の変化により変わったクラスの空気や力関係も、彼女達にとっては話の種の一つでしかないようだ


「勝ち組に億万長者ってお前らＧＳを誤解してるな……」

彼女達の口から自分がクラスメートにどう思われてるねか知った横島の表情は引き攣っていた

それは昔の横島がＧＳに抱いていたイメージと同じなのだが、現実を知った今では酷く都合がいいイメージだと思うのだから


「あれ違うの？　ピート君とタイガー君の話だと横島君はかなり凄いって聞いたけど……」

横島の表情から何か情報が間違っていたのかと首を傾げる愛子だったが、情報元はピートとタイガーらしい

最も彼らは横島の現在の実力と将来性から、トップレベルのＧＳになる事が確実だろうと言っただけなのだが……


「ＧＳで億万長者なんて簡単じゃないんだよ。　よほどの実力があるか、金の為に命を賭けるくらいじゃなきゃな。　俺はそこまで望んでねえよ」

「そうなの？　でもそこそこの稼ぎでも一般企業よりは上でしょ？　やっぱり勝ち組よね」

ＧＳで成功するのは簡単ではないと言う横島だったが、イマイチ愛子達には伝わらないようだ

安全にそこそこの稼ぎでも収入が高いのだから勝ち組だと言い切る辺りに女性特有の現実的な面もあるが、日常と掛け離れたＧＳの厳しさを伝えるのは難しいのかもしれない


（これであの彼女が居なきゃねぇ……　前々から割と嫌いなタイプじゃなかったのよね）

僅かにグッタリとした横島と楽しげな愛子や他の女子を見つつ、一人の女子は内心でちょっと後悔している

決して他人には言えないが、彼女は以前の横島が割と嫌いじゃなかったらしい

あまりにオープン過ぎる欲求が問題だったが、男も女も本性はそれほど違わないのを彼女は理解していた

今からアタックをしたい気持ちもない訳ではないが、魔鈴の美しさや弁当や服装の状況を判断すると無謀としか思えなかった

魔鈴の作戦は割と上手くいってるようである