変わりゆく日々

初仕事から一週間ほど過ぎていた

異界に建てていたカオスの研究所がようやく完成する

こちらは魔鈴宅とは違い完全な鉄筋コンクリートの造りであり、周りの景色や魔鈴宅と比べると些か場違いな感じはあるが見た目よりも機能性を重視した結果だった

しかもこの研究所は霊的環境を重視した特殊な建物である

大地や大気の霊的環境から完全に隔離する特殊な結界と、内部の霊的環境を人工的に調整出来る機能を持たせた人界で最高の施設だった


(どうやら間に合ったみたいですね)

完全したカオスの研究所を見上げた魔鈴は人知れずホッとする

事務所の設立から魔鈴の杖などの除霊アイテムの作成にカオスの研究所を建てることで、魔鈴の元々あった貯金はほぼ底をついていた

以前にも少し説明したが横島やカオスがお金を持ってるはずもなく、全ては魔鈴がいずれ店を開くためにと貯金していたお金を使っていたのだ


(イギリス時代にもう少し貯金しておくべきでしたね)

イギリス時代の魔鈴は魔法の研究をする傍らで研究を兼ねた除霊をして資金を稼いでいたのだが、魔法の研究は何よりお金がかかるものである

古い研究資料やオカルトアイテムを一つ買うのにも数百万など簡単にかかる、魔法の研究をしながら店の開業資金を貯めるのは簡単ではない

そんな中でコツコツ貯めた資金だったのだ


最もコンスタントに依頼を受けるようになった現在は収支が劇的に改善しており、初期投資を抜けば事務所の収支がプラスになっている

初期投資にはかなりの資金がかかったが、魔鈴やカオスはオカルトアイテムを自作出来る為に依頼を受けて行けば回収するのも早かった


(今後の事を考えればまだまだ資金が必要ですね…… 果して間に合うのか)

今後必要な資金をざっと計算した魔鈴は、思わずため息をはきたくなる思いである

きちんとした事務所を持つにはかなりの資金が必要だし、その他にもアシュタロス戦までに必要な資金は相当な金額になるのだ


(あまり露骨に稼いで目立つのもまた問題ですし……)

資金は出来るだけ早急に必要なのだが、今後の人生を考えればあまり露骨に稼いで目立つのは避けたい

加えて魔鈴はあまり資金稼ぎが得意ではなかった

まあ未来ではずっと店を経営していたし出来ない訳ではないが、根本的な価値観としてそれほど急に資金を稼ぐなど考えた事がないのだ


(資金稼ぎは忠夫さんに相談する必要がありますね)

魔鈴自身も未来では横島の母親である百合子に鍛えられたが、資金稼ぎなどは横島の方が向いてるのは確かである

横島自身があまりお金に執着しない事から目立った成果はないが、その才能は魔鈴が一番理解していた


(どちらにしても綱渡りなのは変わりませんね。 まさか私がアシュタロスと戦う日が来るとは……)

資金面の問題を考えていた魔鈴だったが、ふと自分の置かれた立場には苦笑いが出てしまう

第三者として語り聞いたアシュタロス一派との戦いに、まさか自分が参加する日が来るとは思いもしなかったのだから


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