変わりゆく日々

「美神さん、昨日からバイトを始めた山田さんが体調を壊したのでバイトを辞めるそうですけど……」

一方横島が辞めた美神事務所では令子がすぐに次の助手を探していたが、なかなか求める人材が来ないのが現状だった

実際数名のバイトを雇いはしたのだが、全て数日のうちに辞めてしまうのだ

令子は役に立たないバイト共に怒りを感じつつも、そのプライドから去る者を追えるはずもない


「全く役に立たないクズばっかり来るんだから」

怒りを感じつつもおキヌに八つ当たりしないように感情を押さえ込む令子は、最近イライラすることが増えていた

良くも悪くもストレス発散の相手だった横島が去った影響はモロに令子の精神に影響していたが、本人は認めたくないようで余計にイライラを募らせる

そんな令子と新しい助手が上手くいくはずもなく、まさに負のスパイラルだった


「それと六道女学院の学生さんからまたバイトの申し込みがあったんですけど……」

「断っておいて。 商売敵になる人を雇うほど、私は馬鹿じゃないわ」

今回の助手募集には未経験者歓迎と書かれているが、実は令子は霊能者を雇う気がないのだ

六道女学院や一部の霊能者を目指す者に人気がある令子だったが、欲しいのは荷物持ちの助手であって弟子ではない

高い給料を払って他人に技術を教えるなどしたくもないのが本音だった

しかも六道女学院の生徒は業界関係者と繋がる者が多くて何かと面倒だし、加えて六道女学院の生徒は六道家の手前扱いが難しい

現六道家当主冥菜が生徒を自分の娘のように可愛がってるのは有名である

いろいろきな臭い噂も立つ六道冥菜だったが、身内に甘く特に自分の学校の生徒への熱心さもまた有名だったのだ

脱税などの秘密が多い令子は業界関係者を雇うなど、面倒で危険な行為でしかなかった


「誰かタダで命預けてくれる、タフな人って居ないかしら?」

「美神さん……」

令子は言葉にこそ出さないがどうしても横島と比べてしまうようで、有り得ないような人材を望んでいる

さすがのおキヌも僅かに引き攣った表情を見せて、当分助手は見つからないだろうとため息をはく


(横島さんどうしてるかな……)

令子の手前横島に会いに行けてないおキヌだったが、変わりゆく令子の現状を見る度に横島の現状が心配になっている

令子同様に横島も苦労してるならば、なんとか仲直りしてほしいのが本音だった

突然現れた魔鈴の存在はおキヌにとって最も気になる存在だが、自分が幽霊だと自覚があるおキヌは横島の幸せを願う気持ちの方が大きい

横島に恋人が出来た事実に寂しさや苦しさも感じるおキヌだったが、人と幽霊の壁がおキヌの本心を封じる楔になっている

結局おキヌは成り行きを見守りつつ、以前のような楽しい事務所に戻って欲しいと願うしかなかったのである
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