魔鈴心霊相談事務所始動!

同じ頃魔鈴は、GS協会のビルを訪れて除霊の仕事を探していた

魔鈴がいかに現代の魔女と業界で評判でも、それだけで仕事が入って来るほどGSは甘くはない

まして急遽イギリスから帰国しただけに、魔鈴が日本に居る事を知る者の方が少ないのだ


(始めは簡単な依頼からにしましょうか)

今回魔鈴は未来のように、必要以上に目立つつもりは無かった

未来では相場よりかなり安い金額で依頼を受けて帰国早々に目立ってしまったが、アシュタロス一派との戦いを考えれば普段は出来るだけ目立たぬようにしたい


「結構いろいろありますね……」

GS協会が仲介する依頼は様々な依頼があるが、基本的にはオーソドックスな調査か除霊である

その他専門的な依頼も多少はあるが、魔鈴は受けるつもりはない

結局魔鈴は50万円前後の安い除霊を数件受けて帰る事にした

魔鈴と横島は実力はともかく、さほど難解な依頼を受けた経験は無いのだ

無論人並み以上に修行は積んではいるが、危険な依頼や特殊な依頼を受けた経験はほとんど無かった

結果慎重を期して簡単な依頼から経験を積んでいく道を選んでいる



「不思議な気分ですね……」

GS協会のビルを出た魔鈴は、ふと自分の店が入るはずの場所に来てしまう

しかしそこには魔法料理魔鈴はなく、別の飲食店が営業している

この場所に近付くにつれて、魔鈴は自分は未来に居るのかと錯覚するほど当然であり当たり前の風景だった

だが馴染みの商店街の店主達も挨拶を交わす事が出来ない現状は、魔鈴の心に僅かな寂しさを感じさせてしまう


(私は本当に幸せだったのね)

未来の自分がいかに恵まれて幸せだったか、魔鈴は改めて感じていた

そして残された者達がいかに心配してるかと思うと胸が苦しくなる


(これは魂という世界の根幹に関わる部分に手を出した、私達への試練だとでも言うのでしょうか? でも……、これで私はようやく貴女に会えますね。 ルシオラさん)

魔鈴にはいつか自分の店に戻りたいと思う気持ちもあるし、新しい別の未来を作りたいという気持ちもある

突然の状況の変化に魔鈴の心は定まってないが、それでも未来への希望が増えた事には喜びも感じていた

ようやく全てが片付くかもしれないと考える魔鈴の心は、これから先への不安と希望で溢れている



一方異界の魔鈴宅の外では、マリアとの模擬戦を行っていた

魔装術を展開する雪之丞とマリアが近距離で戦っているが、戦況はマリアが圧倒的に有利だった


「クッ……、なんで攻撃が読まれるんだ!?」

「雪之丞さんの・攻撃は、とても・シンプルです」

雪之丞が決して弱い訳ではないが七百年蓄積したデータや経験により、雪之丞の攻撃は全てマリアに予測されていたのだ

来ると解ってる攻撃などマリアには当たるはずも無い


「経験の差じゃな。 伊達に七百年ワシを守って来た訳ではないわい。 思考能力の柔軟性には欠けるが、単純戦闘でマリアを越えるのは人間には難しいのじゃよ」

二人の近くにはいつの間にかカオスがおり、面白そうに戦いを見守っていた

カオスは雪之丞に敗因を伝えて意味深な笑みを残して魔鈴宅へ入っていく

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