メゾピアノの一件から数日後、学校での横島の環境はこの一件でまた微妙に変化していた

難関と噂のＧＳ試験を一発合格の上、唐巣や魔鈴の指導の元とはいえピート達と事件解決をした結果は横島の予想以上に周囲に驚きを与えている

成績も悪く学校も来たり来なかったりしていた横島は以前から変人扱いだったが、僅かなきっかけでその印象は変わり始めてしまう

まして横島はＧＳ業界一と言われれ美神令子の元に居た事も影響して、将来は億万長者かと単純に考える者も少なくない


ＧＳ試験を境に横島の態度が変わった事や真面目に学校に通い始めた事など様々な憶測を呼ぶ行動もあったが、ＧＳ試験合格という目立つ成果によりそんな憶測や疑問は霞んでいく

なんとかと天才は紙一重とはよく言うが、一芸に秀でた才能を示した事が横島の未来へも影響を出し始めていた



「相変わらず完璧なお弁当ね～」

この日も普通に午前中の授業を受けた横島はお昼になり魔鈴の手作り弁当を広げるが、愛子を筆頭に複数の女子が覗き込み味見したいと箸をのばす


「わざわざ味見せんでもいいだろうに……」

「ちゃんとお返ししてるんだからいいでしょ。　彼女本当に料理上手いわよねー　普通は冷凍食品の一つや二つ入ってるのに」

がやがやと弁当の批評を始めるクラスメートに横島は微妙に嫌そうな顔をするが、彼女達が止まるはずはない


「味・彩り・栄養バランスもよく考えてる割には、手が込みすぎてないのがいいわね」

弁当をつまみながら評価を語る女子達だが、味や彩りの割には簡単に出来る料理が多い事が彼女達の評価ポイントらしい

毎日味見してるだけに彼女達の評価ポイントは、レパートリーの多さや料理の手軽さもかなり評価している


「これなんかなら簡単に作れそうね」

「でも同じように作ってもなんか微妙に違うのよね～　一回教えてくれないかしら？」

元々料理好きな女子達が集まってるだけに、お昼の時間は料理の話が多かった

中には魔鈴のおかずを真似て作ってくる者も居るほどである

今のところ横島はあまり口を挟まないが、微妙に彼女達の気持ちを理解出来る自分に過ぎ去りし時を感じてしまう


（見た目は簡単だけど、めぐみの料理は細かなコツがいろいろあるからなー）

未来で１０年以上オーナーシェフとして店を営業してきた魔鈴の料理は、簡単に見えても細かなコツがある事が多い

それほど難しい事をして弁当を作ってる訳ではないが、素人の高校生が簡単にコピーするには少し難しかった



「ワッシは……　ワッシは……」

一方女子達と賑やかに弁当を食べる横島にタイガーは何か不公平さを感じ、一部の男子は苛立ちに似た視線を送っていたが横島はそちらには無反応である

タイガーに関しては別に貧乏な訳ではなくお金の使い道の問題なのだし、未来で自分を吊るし上げにした男子達には基本的に深く関わる事はなかった

と言うかまた吊るし上げにされるのではと、横島は人知れず警戒している

横島の変化に一部の生徒達は違和感を感じ不穏な空気が流れるが、大半のクラスメートは横島の変化を好意的に受け止めていた