魔鈴心霊相談事務所始動!

「横島君、なんか変わったわね」

依頼が終わり教室に戻る最中、愛子はぽつりとつぶやく

具体的な理由はないが、横島の何かが変わったと愛子は確信を持つほど感じていた


「そっか?」

「確かにちょっと前から様子は変わりましたよね。 GS試験の頃からでしょうか? 稀に霊能力に目覚めれば性格や人格が変わる人も居ると聞きますが……」

愛子のつぶやきにとぼける横島に、ピートも同感だと追従する

まあピートの場合は、横島が変わった原因が霊能力の覚醒にあると考えてるようだが……

元々霊能力は魂の力なのだから、強力な霊能力に突然目覚めると魂に眠る前世などの影響が現れる人も稀に存在するのだ

横島の霊能力が強力だと感じてるピートは、前世か何かの影響が多少あると考えていたようである


「さあな~、俺は実感が湧かないからなんとも言えんわ」

ピートの探るような視線に横島は、否定も肯定もせずに笑って済ませてしまう

クラスメートには疑われたり吊るし上げにされる事も覚悟してるため、好きなように想像してくれとしか考えてなかった

そもそも未来から逆行してしまったなど、神魔以外にはバレようがない真実な訳だし


「それにしても今回の交渉は上手かったね。 通常この手の除霊は相手の得意分野で勝ち従わせるのがセオリーなのだが……」

一方横島の除霊というか交渉に興味を持ったのは唐巣だった

横島の除霊は普通のGSの手段とは異なり、どちらかと言えば普通の人間同士が相手の交渉に近いものなのだ

基本的にGSは妖怪を従わせようと考えるが、横島はメゾピアノと学校を対等に扱い仲介しただけなのだから

その方法はGSとしては異質だと唐巣は感じている


「お互いに上手くやれるんなら、それに越した事はないと思ったんっすよ。 愛子と同じようにしただけです」

方法に興味を抱く唐巣に横島は愛子と同じ扱いにしただけだと語るが、それが言うほど簡単でない事を唐巣は理解していた


(妖怪の気持ちを理解しつつ自分の力を示さないと、今回のような結果にはならないだろう。 そのバランスは難しいものなのだが)

ピートやタイガーは横島の説明で納得していたが、唐巣はその難易度の高い結果が偶然なのか狙ったのか読めなく考え込んでいる

戦わずして相手に力を認めさせるだけでも簡単ではないし、ましてメゾピアノが人間との共存を僅かでも望んでいたなど唐巣ですら気付けなかったのだ

交渉は横島が押し切ったように見えたが気難しい妖怪が逃げずに納得した以上は、メゾピアノも人間との共存を望む気持ちが多少はあったのは明らかなのである

全ては絶妙なバランスの上での結果だった

唐巣は横島が妖怪などの人外との関わり方が上手いのは気付いていたし、期待させるモノは以前から感じていたがそれでも今回の結果は出来すぎな気がしていた


(それと魔鈴君はこの結果を読んでいたのだろうか?)

もう一つ唐巣が気になったのは、魔鈴がどこまで考えて契約したかである

元々和解や交渉を前提にした契約なのは気付いていたが、全てを横島に任せた魔鈴がこの展開を予想していたのかが唐巣は気になっていた

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