それから数日は地道な調査が続くが、ＧＳ達の様子は明暗を分けていた。

そもそも令子は香港で一・二を争うような高級ホテルのスイートに泊まっているが、同じホテルに泊まったのはエミ達と冥子でエミと冥子はスイートであり、タイガーは同じホテルの安い部屋である。

まあ安いと言っても高級ホテルの割にはという値段だが。


一方の横島達と唐巣達は近くの別のホテルに泊まっており、こちらはお値段がかなりリーズナブルなホテルだった。

現状では経費は自腹であり、日頃から食費にすら困っている唐巣達は出来るだけ安いホテルがいいのだ。

そして横島達だがこちらも相変わらず資金面には余裕がないのもあるが、そもそも誰も高級なホテルに泊まりたいと考える者が居なかったのが影響している。

横島や魔鈴は最低限の治安が守られてるホテルなら構わないとの考えであり、せいぜい食事を少し贅沢にしようかと考えてるくらいだった。

それに正直令子と一緒の時間を出来るだけ減らしたいとの思惑も横島にはあり、泊まるホテルの違いは好都合なのだ。



「安いから文句はないけど、壁が薄いのはちょっと気になるな」

さて横島と魔鈴が泊まっている部屋は、二人用のビジネスホテルのような狭い部屋だった。

比較的新しいホテルらしく安い割には清潔で文句はないが、二人が唯一気になるのは部屋の壁が薄いことらしい。


「夜は近隣の部屋の音が聞こえますからね」

隣の部屋のテレビや話し声が微妙に聞こえる状況には魔鈴も微妙な表情を浮かべる。

それがテレビの音や話し声だけならばいいが、夜の生活らしき声も夜が更けると微かに聞こえて来るのだ。

まあ男女が同じ部屋に泊まっていればすることは一つしかないが、横島も魔鈴も他人に聞かれたいとは思わないらしく結構気を使ってるらしい。


そして高級ホテルのスイートに泊まってる令子だったが、やはり横島達が香港に来てから機嫌が悪くなっていた。

仕事だから仕方ないと割り切ってはいるが、感情的に面白くないのは変わらないらしい。

まして同じ部屋に泊まってると聞けば、嫌でも二人の関係を理解するし考えてもしまう。

まあ令子の場合には横島なんかに抱かれる魔鈴を馬鹿な女だと心底考え、想像しそうになると蕁麻疹が出てくるほど嫌悪感をあらわにしているが……。

その反面で本人にも理解出来ない感情の蟠りが高まっており、不機嫌の原因にもなっている。

あれだけ嫌だったセクハラが無くなりすっきりしたとの気持ちもあるが、イライラは以前より募るのだから本人は不思議な気分であろう。


まあそれでもそのイライラを横島にぶつけないだけ、令子は自制してるとも言える。

心情的に横島は自分の自由にしていいはずなのにとの想いも僅かには残っているが、仕事のことを考えると魔鈴を怒らせるのは得策ではない。

死津喪比女の時の魔鈴達の実力を考えれば当然といえば当然だが。

ただ正直令子にとってはメドーサの計画よりも、横島と魔鈴に感じる違和感の方が気になるらしい。

調査が順調に続く傍らで令子と魔鈴の女の戦いが静かに起こっていた。