香港編

「……その時の状況にもよりますが、単純に考えてダメージを与える可能性がある魔法ならば幾つかあります。 ただこちらの魔法がまともに当たるとは思えないのでなんとも」

唐巣のみならず令子やエミからまで期待されてる現状に、魔鈴は少し困った様子であった。

期待される理由は理解するが、魔鈴の魔法もあのメドーサが相手では当てるだけで一苦労である。

仮に超加速を計算に入れなくても、メドーサが避けれないような魔法はさほど多くはない。

加えて戦う場所も問題だった。

地下の閉鎖的な空間では、下手な魔法を使うと味方まで生き埋めになる可能性もゼロではない。

魔鈴の場合はいっそのこと風水盤のある地下空間を風水盤もろともに破壊した方が楽である。

ただゾンビにされてるだろう行方不明の風水師の存在や計画が判明してない現状ではとても言い出せる方法ではなかったが。


「魔鈴君の言うことは最もだ。 やはり情報が不足してるね。 せめてメドーサの目的が分かればこちらとしても動きようがあるのだが」

魔鈴に期待していた唐巣や令子達は思ってた以上に難しいと言いたげな魔鈴の言葉で、静かにため息をつき今後の方針の話し合いを始める。

まあ令子も当初から理解はしていたようだが強力な魔法を使うのも簡単ではないし、ましてメドーサクラスにダメージを当たるのは簡単ではない。

結局のところメドーサの目的を知らないことには動きようがなかった。



「それは使い魔かい?」

話し合いの結果メドーサの目的を調べることを最優先に決めた一同だったが、魔鈴はさっそく前回ハーピーの時に使った使い魔の魔法を使いメドーサ達の情報収集をすることにしていた。

目の前で簡単に使われる失われた魔法に唐巣達は多少驚くものの、死津喪比女の時のインパクトが強いのかさほど追求はしない。


「ええ、単純なお願いなら聞いてくれますよ。 とりあえず鎌田勘九朗ならバレないと思います」

正直この使い魔もメドーサが相手ではバレる危険がゼロではないのだ。

魔鈴はカオスと事前に相談して、勘九朗に狙いを絞って使い魔を尾行させるつもりである。


「ねえ、感覚共有とか出来ないの?」

「出来ることは出来るんですけど、感覚共有まですると使い魔達の負担も大きいんです。 正直カメラで監視した方が楽なので」

そのまま使い魔としたカラスに超小型カメラを装置する魔鈴に、エミは若干不思議そうに尋ねていた。

カラスを使い魔としてコントロール出来るのに、何故カメラを別に付けるのか不思議だったらしい。

実は使い魔の魔法はその気になれば感覚を共有して使い魔の見た物などを、使役する側が離れた場所で受け取ることも可能なのだ。

ただこれは使役する魔鈴も使い魔とされるカラスの側も結構負担が大きく、長時間の使用は向かないのである。

結果としては最低限の魔法とカメラを併用する方が遥かに効率もよく安全であった。

令子達は魔鈴の魔法の威力に期待してるが、本来は支援やサポート向きの魔鈴はこういった非戦闘系の魔法の方が当然得意なのである。



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