香港編

一方の横島と魔鈴の二人は、日に日に迫る満月を前に緊張を感じつつ日々を過ごしていた

同じ未来を知る者でも人生経験の桁が違うカオスとマリアは違うのだろうが、横島と魔鈴はメドーサと戦う可能性や元始風水盤の危険度を考えると素直に怖いのである


「勢いって大事だよな」

その日横島は現在魔鈴と二人で寝室に使っている元魔鈴の部屋のベッドに寝転ぶと、ため息混じりに過去を思い出していた

未来では令子や小竜姫と何度も死闘を繰り広げたメドーサを、自分が主体的に戦うかもしれない現状が横島は不思議であり怖いのだ

結果的には未来で二度メドーサを殺したのは横島だが、両方共に横島が主体的に戦った訳ではない

まるで運命が転がり込むようにトドメを刺す機会が横島に巡って来ただけなのだから

横島はアレでメドーサに勝ったとは全く思わないし、今戦っても全然勝てる気がしないのである


「忠夫さんの過去のこの時期の行動を、勢いという言葉で片付けていいのか私は悩みますね。 何度考えても死ななかったのが不思議です」

過去の現在を比べて横島が一番失ったモノは勢いかもしれない

良くも悪くも過去の横島は勢いがあったが、今の横島にはそれがないのだ

ただ魔鈴から見ると過去の横島の行動を勢いと一言で言い切るのは違う気がした

無茶や無謀と言う言葉すら通り越し、命を粗末にしてるようにも感じてしまうのである


「あの頃はそこまで知らなかったからな。 それに……」

昔を思い出し自分がいかに無知だったかを痛感する横島だが、同時に令子の色香に惑わされていいように利用されてた過去は相変わらず複雑な感情を思い出してしまう

実は当時の令子には明確な愛情はなくても横島に何かしらの特別な感情はあったのだろうが、残念ながら横島はそれを今だに知らない

まあその特別な感情も前世の縁から来る感情なのか、それとも令子との付き合いからくる仲間としての感情なのか、それすら誰にもわからないことなのだが


「……まあ若かったですからね」

結局前世からの縁が全ての始まりなのだろうと思う魔鈴だが、それにしても色香に惑わされてただろう過去の横島を思うと何故かため息が出てしまう

あの時代があったからこそ魔鈴は横島と結ばれ一緒に居るのだが、それでももう少し早く横島に出会えてればとも思ってしまうのだ


「とりあえずの問題はメドーサなんだよな~」

なんとなく自身の恥ずかしい過去に話が傾きつつあるのを感じた横島は、話を変えるようにそれとなく本題であるメドーサに戻す

魔鈴はそんな横島の意図に当然気付くが、あえてそこには触れずに思考をメドーサに切替える


「どこから介入するかによりますが、未来のように最終的には風水盤を利用して撤退させることが理想ですなんよね」

「問題はメドーサの切り札の超加速か」

メドーサの件もいろいろ難しい問題は多いが、横島と魔鈴の一番の問題は今の二人の霊力ではメドーサの超加速に対抗するのが非常に難しいことだった



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