香港編

一方小竜姫の依頼を受けた令子だが、問題はおキヌをどうするかであった

記憶がないおキヌをメドーサ絡みの依頼に連れて行くのは少々危険過ぎる

しかし一人で事務所に残して行くのも不安が残ってしまう


「私は構わないが、もう少し受ける依頼を考えた方がいいのではないかね?」

結局令子は唐巣に留守を告げておキヌの様子を見に行ってくれるように頼むが、唐巣は令子の頼みを引き受けつつもおキヌが微妙なこの時期に海外の依頼を受けた令子にいい顔はしなかった


「私にも事情があるのよ。 悪いけどお願いね」

唐巣の言うことも理解する令子たが、小竜姫の依頼を早々簡単に断れないのは令子といえど仕方ないのだ

まあ唐巣にでさえ小竜姫の依頼だと告げない令子にも問題はあるのだろうが……

そんな訳でおキヌには事務所の留守番を頼み、夜は唐巣に行ってくれるように頼んだ令子は香港に旅立っていく


(海外の仕事を一人で行くのは初めてね)

令子自身すでに日本でトップクラスのGSだと自認してるが、流石に海外の依頼を受けたのはピートの依頼のみだった

一人での海外旅行は慣れてるので問題はないが、あのメドーサ絡みの仕事を一人で行くことには緊張感も感じている

この時令子は何故か微かな寂しさを感じるが、それの訳を理解する前に心の奥底に押し込めてしまう

もしこの時にかつての横島とおキヌが居たならば……

そんな有り得た未来が一瞬頭に浮かんだが、それも同時に忘れようとした

何はともあれ小竜姫の依頼を受けた令子は香港に旅立ったのである



さてその日の横島だが、やはり学校で授業を受けていた

面白い事件など全く起きない平和な学校での授業だが、やはり横島には退屈なことでもある


「美神さんが海外の仕事に行った?」

それは体育の時間であった

この日は男子はバスケットボールだったが、例によって横島とピートはあまり目立たないように適当に手を抜いている

まあ実際に熱中してるのは半数程度であり、後はダラダラと参加してるだけなので横島とピートも目立ってないが……

そんなバスケットボールに一応参加してる横島とピートだったが、ふとした世間話程度でピートが語った件に横島はドキッとしていた


「ええ、なんでも断れない依頼だったとか。 わざわざおキヌちゃんを先生に頼んで行きましたから少し時間がかかる依頼なようですよ」

ピートとしては思い出したので語っただけなのだろうが、横島はその話から風水盤の事件の依頼が令子に行ったと確信する

まあ現時点で香港に縁がない雪之丞に小竜姫が依頼するはずはなく、手堅く考えれば令子に依頼して当然なのだが

ただ横島としては唐巣に依頼が行って欲しかったと言うのが本音である

確かに令子の方が戦闘力は唐巣よりも遥かに強いし状況への対応力も高い

メドーサ相手に裏をかける可能性があるのは間違いなく令子なのだが、反面では全体的な視野の広さや状況に対する慎重さなどは唐巣の方が上なのだ

小竜姫がメドーサに対抗するには令子が最適だと判断したのは間違いではないが、令子では横島達が動きにくくなってしまう



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