母からの伝言

次の日令子はハーピーと戦うことになったのだが、結局は誰かが囮となりおびき出すしか方法がない

しかし幼い自分や母親を囮にすることは流石に令子でも出来ず、自分が囮になるしか無かった

そんな令子がおびき出すのに選んだ場所は郊外にある廃工場である

実は適度に隠れる場所があり近くに邪魔になる人が居ない場所と言われると、他に思い浮かばなかっただけなのだが


具体的な方法として美智恵がハーピーの目を盗み廃工場に先回りして防御用の結界の準備するなどして、令子がハーピーと対決するのだが結局は美智恵の手助けを借りた令子が勝って終わる

結界と廃工場の建物を利用してハーピーに手傷を負わせ、逃げだそうとするハーピーを逆に狙い撃ちするのだから戦況は終始令子のペースだった

魔鈴が心配した冷静になったハーピーだったが、同時に令子まで冷静になったのだから勝負は分かりきっていたのかもしれない

最終的に美智恵は何度か動きを鈍らせるように狙撃して援護をしたが、それが適切だったかは判断が別れるところだろう

ただ一つ言えるのは横島が居ない現状で令子と呼吸が合うのは、美智恵が一番だという結果が残ったことである

その後ハーピーを倒した美智恵だが、自らは雷をさほど操れないらしく雷雲が来るまで美神事務所に滞在することになった


「そういえば彼女は何日ほどこちらに居たのですか?」

「一週間とちょっとだったかなぁ……。 神父のとこに挨拶回りに行ったりしてたけど」

美神親子対ハーピーの戦いを見守っていた魔鈴と横島だったが、取り立てて目新しい発見は無かった

ごくごく普通の方法でハーピーを倒しただけなのだから

そんな中で魔鈴はハーピーよりも美智恵がしばらく滞在することが気になっていた


「もしかすると彼女が未来を変えるきっかけになったのは、この事件かも知れませんね」

ハーピーと戦う令子や影でサポートする美智恵を見て、魔鈴は一つの仮説を立てている

美智恵がいつ時間移動の能力を身につけ魔族にバレたのかは知らないが、そのせいで娘が狙われる事態になったことで美智恵は責任を感じて心配したのではと思うのだ

今回美智恵が未来に来た理由は、未来の令子にハーピーの存在を教え今後も身の回りに気をつけるようにさせる為だったと考えるとある程度説明がつく

しかし結局美智恵は自らのミスにより狙われる娘の未来をを案じて、原因を調べていく内にアシュタロスに関わる真実を知るのだろうと思うのだ


「元々は未来を変える気は無かったってことか?」

「あくまでも仮説ですが、人が始めから未来を変えようと思うでしょうか? そんな現実的でない選択肢よりは始めは未来の娘に警告を与える程度に済ます予定だったと考える方が自然かと……」

所詮は仮説の域を出ない話ではあるが、現在過去から来た美智恵がこの先十年近くの間に歴史や未来を調べたことはほぼ確定である

そもそも美智恵の始まりがいつなのかは横島や魔鈴には知ることは出来ないし全ては憶測でしかないが、今判明してることは幼い子を連れた美智恵がすでに未来を変えることに躊躇などないということだろう

横島と魔鈴は自分達の相手がいかに恐ろしいか再認識していた



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