母からの伝言

「れーこちゃん、おやつにしましょうね」

一方突然隠れていろと言われたおキヌは、幼い令子におやつを与えて令子の寝室に移動していた

職業柄令子の寝室は遮光カーテンがあり、おキヌはそのカーテンを閉めて幼い令子と昼寝をしようと考えたらしい


「お姉ちゃん遅いね」

「れーこちゃんのママが早く迎えに来れるように頑張ってるから、いい子にしてましょうね」

先程から暇を持て余し気味の幼い令子の相手をおキヌは根気よくしている

幼い令子は割と母親の為と言えば素直になるのを見抜いているおキヌは、一緒に遊びつつも母親の名前を出しながら上手くコントロールしていた


「じゃあ、これよんで!」

令子の部屋のふかふかのベッドに横になる幼い令子は、おキヌに絵本を読んでもらいつつ時間を潰す

途中ハーピーが事務所に来て周りをウロウロしたり使い魔の小鳥を使って窓を突いたりするが、遮光カーテンを閉めたおキヌと幼い令子は全く気付かぬまま時間だけが過ぎていく

ハーピーはそのまま事務所の周りをウロウロするが、人工幽霊に不審に思われてしまうだけでおキヌ達が出てくるはずもない

結果的に言えば横島の不在がいい方向に変化を与えたのは確かである



「あんなの相手するのはごめんだわ」

そして車で事務所に急ぐ令子だったが、空を飛び離れた場所から狙撃のように攻撃するハーピーの相手などしたくないのが本音だった

まあ霊体ボーガンならば反撃出来る可能性もあるが、何より依頼でもない戦闘は出来るだけ避けたいのだ


「どうせママが来るなら、それまでは下手に動かない方がいいかも知れないわね」

令子としては美智恵が来るまで幼い令子を守ればいいだけだし、ハーピーは母親が来てから対応したほうがいいと考えを巡らせていく

というか先程の攻撃でかなりのダメージを受けており、現状の状態でハーピーと戦うのは危険でしかなかった

次に同じ攻撃を受けたら戦えなくなる可能性もあり、どうせ元々は母親絡みの相手なのだから母親を待った方がいいと結論付けてしまう


結局令子はそのままハーピーに襲われることなく事務所にたどり着いていた

しばらく事務所の周りをウロウロしていたハーピーだが、令子を警戒してか再び姿をくらましてしまったのだ



「うむ……、なかなか興味深い展開だな」

「やはり忠夫さんが居ない影響でしょうか?」

その頃魔鈴宅では雪之丞に変わりカオスが、魔鈴と一緒に令子の様子を見守っていた

カオスもまた自分達が関わらない歴史の流れには興味があるようである


「そうじゃろうな。 元々この時代の横島は未熟過ぎて両刃の存在じゃ。 失敗も多いからのう。 居なくなれば失敗は確実に減るじゃろう」

現状の歴史の変化は横島が居ない影響の可能性が高いが、問題はそれが総合的にプラスかマイナスかだった


「難しいですね。 確かに失敗は減りましたが、考えようによってはハーピーに冷静にさせる時間を与えてしまいました。 あの能力で冷静になられるとかなり厄介です」

今のところ横島が居ない影響はプラスに働いているように見えるが、ただ先を考えれば不利な可能性も捨て切れない

何よりハーピーが冷静に根気強く待てば困るのは令子なのだから



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