（ピートが苦労するはずだな）

嫉妬めいた視線の中には単純な嫉妬ばかりではなく差別的な意味合いも含まれてると気付いた横島は、密かにピートの苦労に気付き複雑な気持ちが込み上げてくる

バンパイアハーフのピートは常に差別や偏見と戦って来たのだろう

かつての単純にピートに嫉妬した自分を思い出すと苦笑いもでない横島だったが、世の中そんなシンプルではないしピートはかつての横島以上に苦労しているのだろう

横島はいかにかつての自分の視野が狭かったかを再認識してなんとも言えない気持ちになっていた



「やっぱりママからの手紙だわ」

その頃東都大を訪れていた令子は、父親が残した手がかりの中に入っていた美智恵の手紙を読んでいる最中だった

新しい封筒の中にある古くなった手紙を見た令子は、言葉に出来ない感情の高ぶりを抑えながら読み進める

一度は別れを済ませ二度と会えぬと思っていた母との再会は、令子にとって非常に大きなモノだった

おキヌや幼い自分の手間深く考えないようにしていた令子だが、改めて手紙を読むと何とも言えない感情が込み上げてくるが……


（あの親父こっそり会ったことがあるわね）

感慨深い想いだった令子を現実に引き戻したのは手紙に書かれていた小言である

がめついことなどに関して小言が書かれていると、感情に浸り始めていた令子の気持ちをぶち壊しにしてしまう


「死ね！　美神令子！」

その時だった

突然近くにあった木から小鳥達がざわざわと飛び立ったかと思えば、ハーピーの声が聞こえ凄まじいスピードで令子にハーピーの羽を利用した攻撃が迫っていく

とっさに神通棍を手に持ち対応しようとするが、ハーピーの攻撃は令子が反応できるスピードではなかった

防ぐことすら出来なかったハーピーの羽は見事に令子の胸の中央に命中してしまう


「あっさりしとめたじゃん。　母親はこのフェザーブレットを全部避けたんだがねぇ。　ダメな二代目でよかったわ」

倒れて息絶えたかに見える令子の姿に若干拍子抜けした感じのハーピーだったが、すぐに復讐を果たした喜びからかペラペラと余計なことを語っていく



「死んじまったのか？」

一方魔鈴宅では魔鈴と雪之丞が使い魔で全て監視していたが、雪之丞は倒れて動かぬ令子に死んだと思ったようだ


「あの程度で死ぬのならば一流とは言われませんよ。　死んだ振りをして反撃のタイミングを探ってるのでしょう。　それにしてもハーピーは、余計なことを話さずに頭にもう一発攻撃をすれば勝てるはずなのですけどね」

実際横島から聞いた話でしかハーピーを知らない魔鈴と雪之丞は興味津々な様子で見ていたが、魔鈴は横島がハーピーのことを頭が良くないと言った意味を悟っていた

令子は体勢的にあの攻撃を何度も避けれない可能性が高い

本来ならばここでトドメを刺して終わりでもおかしくないのだ


「正直、俺は横島やアンタがなんで美神令子をそんなに評価するのか理解出来んな。　確かに弱くはないが……」

令子の強さをあまり実感のない雪之丞は魔鈴が監視してまで令子を見てる理由が分からないようである