母からの伝言

一方美神事務所の中ではグッタリした令子とおキヌと、何故かニヤニヤとした厄珍が居た


「いや~、令子ちゃんが子供を預かるなんて世界が終わってもないと思ったアルヨ」

何故厄珍が居るかといえば泣き止まない幼い令子に困った令子が、厄珍に女の子が好きそうなおもちゃやお菓子を持って来るように無理を言ったからである


「うるさいわね。 私だって好きで預かった訳じゃないわよ」

「手数料はきちんと頂くアル。 流石のワタシも今回は大変だったネ」

自分にソックリな子供で慌てる様子に厄珍は訳ありだと気付いたらしく、口止め料を欲しいと言わんばかりの表情を見せるが令子は相手にしない

別にやましいことはないと言わんばかりに手数料込みの料金を払って厄珍をさっさと帰してしまう


「この後どうするんですか?」

「ママが迎えに来るまで面倒みるしかないわね」

厄珍を追い出し幼い令子が大人しくなったことに令子とおキヌはようやく一息つくが、例によって令子は全く役に立ってない

おキヌが幼い令子をなだめたからよかったが、令子自身はすでに子供に嫌気が差し始めている


「こんな時に……あれっ……今誰かの顔が浮かんだような……」

そんな令子と対照的におキヌは幼い令子を見て一瞬誰かの顔が浮かび何かを思い出しかけるが、それ以上は何も思い出せない

今一瞬誰かが居てくれればと顔が浮かんだのだが、それが偶然なのか記憶なのかすら思い出せない


「悪いけどしばらく面倒見てちょうだい。 私には無理だわ」

おキヌが思い出そうとした人物が誰かよく知る令子は、その話題にあえてスルーしたまま幼い令子をおキヌに任せてしまう

やはり令子は子供が嫌いだった



「今頃大変だろうな~」

同じ頃、横島達は少し早い夕食にしていた

最近慣れてきたのか魔鈴の手料理をガツガツと遠慮なく食べる雪之丞を見た横島は、ふと過去を思い出す


「何のことです?」

「この頃の美神さん、子供嫌いなんだよ。 まあおキヌちゃんが居るから大丈夫だろうけど……」

幼い自分が来た時の令子を思い出した横島は思わず苦笑いを浮かべている

魔鈴と雪之丞は若干不思議そうに横島を見るが、横島は自分の居ない現在の美神事務所を想像するとつい笑ってしまうようだ

まあ戦力として役に立ったつもりはないが、子守は役に立ったつもりなのだし自分の居ない現在がどうなのか少し興味があった


「そうなんですか……」

横島の言葉に魔鈴は少し驚き考え込む

未来で令子は年の離れた妹の面倒を見てたのを知っている魔鈴としては、それほど子供が嫌いだとは思わなかったらしい


「あの人も随分性格が変わるからな~ 俺が会った頃は凄まじかったよ」

それが成長と言うのか横島には分からないが、令子の性格が段々と柔らかくなるのは理解していた

この頃の令子はだいぶ優しくなった方だと語る横島に魔鈴と雪之丞は理解出来ないような表情を見せているが……



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