同じ頃美神事務所では、降り続く雨の為に仕事をキャンセルした令子が若干不機嫌そうに暇を持て余していた

最近はおキヌの関係もあってあまり不機嫌な日は少なかったが、やはり雨の日はあまり機嫌がよくない


「美神さん、お昼どうしますか？」

前にも説明したが退院して以来オカルトの勉強をしているおキヌだが、加えていつの間にか食事や掃除などもするようになっている

以前の生活ですっかりおキヌに頼る癖が出来ている令子は、放っておくと事務所がどんどん散らかっていくのだ

おキヌ自身は相変わらず記憶はないが、魂は以前の生活を覚えてるようで自然に料理や掃除などをするようになっていたのであった


「適当にある物でいいわ」

相変わらず機嫌があまりよくない令子は考えるのが面倒なのかおキヌに任せてしまう

そのままおキヌが冷蔵庫の食材を見て昼食を作ろうとした時だった

突然強烈な雷光が窓からおキヌを照らすと、今まで感じたことがないほどの轟音が辺りに響き渡る


「おキヌちゃん、大丈夫！？」

先程まで不機嫌そうだった令子だが、今までに感じたことがないほどの落雷の轟音に慌ててキッチンに駆け込んで来た

おキヌ自身はあまりの轟音に耳を押さえたまま半ば固まっていたが、怪我がないようで令子はホッと一息つく


「すごい雷でした」

「近くに落ちたみたいね」

怪我もなくすぐに落ち着いた二人だったが、あまりに凄い雷に近くに落ちたのかと玄関から外に様子を見に出て行こうとドアを開けるが……


「この子を……、娘をお願いします」

そこに立っている人物を見て令子は固まってしまう

絶対に居るはずのない人がそこに居るのだ

令子が決して見間違うはずがない相手、 かつて死んだはずの美神美智恵が幼い子供を抱えたまま雨に打たれて立っている


「あの……」

固まる令子と対照的におキヌは不思議そうに美智恵と幼い子供である令子を見つめるが、美智恵は詳しく話してる時間がないと半ば強引に幼い令子を二人に預けてしまう


「ちょっと待って！　訳を……」

「お願い、この子を守るには今はこれしか方法がないの」

ようやく我に返った令子は慌てて説明を求めるが、美智恵は何も説明しないまま再び雷に打たれて姿を消してしまった

目の前で雷が人に落ちる姿を見たおキヌは思わず悲鳴を上げるが、残された場所には誰もいなかったのである



「あの人はね。　私のママなの。　私が中学生の時に亡くなったけどね」

幼い令子を抱えたまましばらく立ち尽くしていた二人だが、いつまでも途方に暮れてる訳もいかずに事務所に戻っていた

濡れた服を着替え髪を乾かし眠っている幼い令子の服も着替えさせた二人は、ようやく一息つき令子が事情を説明し始めるがおキヌは意味がわからないらしく反応に困っている


「お母さん？　亡くなった？」

「多分この子は私よ。　ママは時間移動したんだと思う」

理解出来ないおキヌに、自らも一つ状況状況を確認するように令子は話していく

いよいよ美神令子に第一の試練が訪れようとしていた