母からの伝言

さてこの頃の学校での横島だが、一時期の騒がしさもすっかり過去となり平和な学校生活が訪れていた

微妙な関係だった一般男子達がいい加減最近の横島に慣れて受け入れたことで、クラスの雰囲気はかなり改善している

以前吊るし上げにして謝罪してない三人に関しては相変わらず横島と関わらないが、その他の男子達はすでに現状を受け入れいたのだ

正直いつまでも過去ばかり見てるほど彼らも馬鹿ではないということだろう

加えて意地になって対立している吊るし上げ三人組が、逆にその他の男子が冷静になれる原因だったりする

横島と女子が全く彼らを相手にしてない為に、最早対立にもなってないのだ

はっきり言うと変わりゆくクラスの流れに乗っただけなのだろうが……



「久しぶりね、横島君」

ようやく学校生活が落ち着きホッとしていた横島だったが、運命はまたもや横島に新たな問題を投げかける


「久しぶりっすね、先輩。 去年の春以来っすか?」

昼食も終わり屋上にでも行こうと教室を出た横島は、懐かしい人物に声をかけられていた

彼女の名は奥田遥

横島の一つ上の先輩であり、同じ中学出身の数少ない知り合いであった

長い黒髪の美少女でありミステリアスな雰囲気を持つ女性である


「そうね。 一年ぶりくらいね。 貴方が入学してすぐに学校に来なくなったもの。 会いたくても会えなかったわ」

「また、そうやって俺で遊ぶんっすか? 勘弁して下さいよ」

教室の入口付近で三年でも有名な美少女が横島に親しげに話し掛けたことで、横島のクラスは静まり返り聞き耳を立てていた

どうも知り合いらしいことはわかるが、横島に接する遥の態度は妙に親しげなのだから


「あら、私は嘘はつかないわよ。 私に告白した癖に他の人にも告白した貴方と違うもの」

「人聞きの悪いこと言わんで下さい。 考える暇もなく拒否したのは先輩じゃないっすか」

戸惑いを隠せない横島に遥は意味ありげな笑みで中学時代の話を持ち出すが、横島は慌てて周囲に誤解されないように真実を付け足していく

しかし時はすでに遅いと言うか、クラスメート達はすでに横島と遥の関係を邪推し始めている


「そうだったかしら?」

「あの……、それでなんか用っすか?」

「噂の美人の彼女が出来たっていう横島君を見に来たのよ。 いけないかしら?」

二人の会話は終始横島が押されっぱなしだった

簡単に横島を手玉に取る遥は学校では有名な美少女だが、同じく学校で有名な問題児の横島と親しい事実はまたもやクラスメートに衝撃を与えてしまう


「いや~、いけないって訳じゃ……」

「噂の彼女に今度会わせてね。 また来るわ」

動揺して引き攣った表情の横島に遥は満足そうな笑顔を残して去っていく

横島は本来はこの時点で再会するはずがない遥との再会に、戸惑いでいっぱいだった


「横島君! どういう関係なの!?」

そして遥が去った後で横島が再びクラスメートに囲まれたのは言うまでもない



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